川瀬七緒『ヴィンテージガール』(講談社)

第165回直木賞の候補作が,以下のとおり発表されました。

一穂ミチ『スモールワールズ』
・呉勝浩『おれたちの歌をうたえ』
・佐藤究『テスカトリポカ』
・澤田瞳子『星落ちて、なお』
・砂原浩太朗『高瀬庄左衛門御留書』

・・・澤田瞳子さん,もう5回目の候補作入りじゃないですか! 委員の皆様,さすがにそろそろ取らせてあげてください。

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さて。

美術解剖学と服飾の深い知識を駆使して,真相に迫る。川瀬七緒『ヴィンテージガール』

小さな仕立て屋を営む桐ヶ谷京介。服のシワを見ただけで,その人の病気や境遇が,ある程度分かる。ある日,京介はテレビの公開捜査番組を見たところ・・・。

探偵物のミステリである。主人公の有する特殊な知識によって謎を解く,というタイプのものはこれまでにもあったが,本作品は「服飾」の知識を用いるというもの。自分がまったく知らない分野の知識というのは,新鮮である。

それにしても主人公の京介は,よく泣く。本当によく泣く。これだけ主人公が涙にくれる探偵ミステリというのも珍しいのではないか。

シリーズ化,するのかなあ。あるいは映像化とか。


(ひ)