バルザック『ゴリオ爺さん』(中村佳子訳・光文社古典新訳文庫)

雑誌「ダ・ヴィンチ」のBOOK OF THE YEARが今年も発表!
本年度の小説部門1位は・・・加藤シゲアキ『オルタネート』!!
ジャニーズだとか芸能人だとか,そういうのに関係なく面白かった。
おめでとうございます!

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加藤シゲアキ『オルタネート』と「ダ・ヴィンチ」1月号

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さて。

失われた時を求めて』の中で,バルザックユゴーの名前が何回か挙がっていた。まあ今ならどんなフランス文学も読めそうな気がしてきたこともあり,ちょっと前から気になっていたバルザックゴリオ爺さん』にチャレンジ。

パリの下町,ヌーヴ=サント=ジュヌヴィエーヴ通りにある下宿「ヴォケール館」。ここに一人の老人が住んでいた。その名を「ゴリオ爺さん(ペール・ゴリオ)」――。

・・・などと書くとこのゴリオ爺さんが主人公のようにみえるのだが(そしてそれはある意味でそうなのだが),でも実際は,その隣に住む若者・ラスティニャックの目線で描かれた物語であり,実質的な主人公はこの若者の方だと言っていいのかもしれない。地方の貧乏貴族の家に生まれ,パリで法学を学ぶためにこの粗末な下宿で生活をしているラスティニャック。本作は,うぶな若者である彼が,やがてパリの社交界に出入りし,出世の野心を抱いていくという物語である。

全4章からなるこの『ゴリオ爺さん』(なお,章立ての経緯については巻末解説に詳しい。)。第1章の序盤はやや説明的な文章が続くが,その終り頃に物語が動き始める。そして第2章を経て,第3章はドラマチックな展開が次々と繰り広げられる! さすがバルザックストーリーテラーとしての才能をいかんなく発揮!

そして最終章の第4章。

第3章がこれだけ盛り上がったのだから,第4章はきっと後日譚みたいな穏やかなストーリーになるのだろう・・・などと思っていたら,甘かった。第4章こそが,本作品の真髄であり,バルザックの真骨頂であった。

最後の1ページに至るまで,濃密な話でした。いやぁ読んでよかった。

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バルザックゴリオ爺さん


(ひ)