2022-01-01から1年間の記事一覧

青木道彦『エリザベス一世』(講談社現代新書)

こざき亜衣『セシルの女王』(ビックコミックス)が面白い。16世紀のイングランドを舞台にした歴史物語である。タイトルの「セシル」とはウィリアム・セシル、「女王」とはもちろんあのお方。まだ第1巻が出たばかりなのだけれど、これからが楽しみである…

伊集院静『ミチクサ先生(上・下)』(講談社)

うちの国語の先生が、俳句の授業の中でこの本を紹介していたので、さっそく読んでみる。 漱石夏目金之助の49歳の生涯を、畏友・正岡子規、妻・鏡子、そして猫とともに、ミチクサしながら、ゆっくりゆっくりともに歩いてゆく。 文中いたるところに添えられた…

浅倉秋成『俺ではない炎上』(双葉社)

『六人の嘘つきな大学生』の衝撃からはや1年。また新たな名作ミステリの誕生か!? 浅倉秋成『俺ではない炎上』。 大手ハウスメーカーの営業部長・山縣泰介。バリバリと仕事をしていた彼は、ネット上で突然「女子大生殺害犯」と断じられ、実名や顔写真が一…

堂場瞬一『ザ・ウォール』(実業之日本社文庫)

BIG BOSS率いる北海道日本ハムファイターズを、ずっと気にかけている。どこかでこのチームは大化けすると信じているし、そうなったら日本の野球が変わる。 ファイターズは来年春から新球場に移る。「世界がまだ見ぬボールパーク」なんだそうだ。球場にはそれ…

オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』(大森望訳・ハヤカワepi文庫)

伊坂幸太郎さんの新刊! 今回はどうしようかと思っていたけれど・・・面白そうなので読んでみるか~。 --- 以前読んだオーウェル『1984年』が面白かったので、同じディストピア小説の古典つながりで、今度はこちらを読むことに。オルダス・ハクスリー『…

伊坂幸太郎『マイクロスパイ・アンサンブル』(幻冬舎)

大先生がいつも新刊が出たらすぐに評される伊坂幸太郎、あれ、これはまだだぞ?ということで、私も大好きな伊坂幸太郎。表紙もかわいくて、手にしてしまいました。 舞台は猪苗代湖。エージェントとして危険な任務に向き合う男と、突然彼女に別れを告げられた…

五味文彦=本郷和人編『現代語訳 吾妻鏡(7)頼家と実朝』『同(8)承久の乱』(吉川弘文館)

ずっと読み進めている『現代語訳 吾妻鏡』。第7巻「頼家と実朝」は、建仁元年(1201年)から建保元年(1213年)までを収録。いよいよ北条義時が権力を掌握していく。 相変わらず源頼家は無能な将軍として描かれ続け、結局、何ら見せ場のないまま修…

黒川祐次『物語 ウクライナの歴史』(中公新書)

2022年5月15日。葵祭。沖縄復帰50年。犬養毅首相が襲われて90年。74回目のナクバ。 遅ればせながら手にした、元駐ウクライナ大使によるウクライナ史である。 紀元前のスキタイ人に始まり、キエフ・ルーシの建国と、リトアニアとポーランドによる占領、コサッ…

稲田豊史『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)

映画を早送りで観る人たちがいるという。NetflixやAmazonプライム・ビデオ等の動画配信サービスで映画を観る際に、普通に鑑賞するのではなく、1.5倍速で流したり、スキップをしたりしながら観るのだとか。稲田豊史『映画を早送りで観る人たち』。 つまら…

重松清『とんび』(角川文庫)

何年か前までは、映画を観に行くといえば、チビたち連れてのアンパンマンだった。その後、ドラえもんになり、ポケモンになったりして、最近ではディズニーアニメまで観に行けるようになった。ただ、予告編は大人の映画も交じっているので、そこでちょっとだ…

タイザン5『タコピーの原罪』(集英社)

今年上半期、最も話題になったコミックではないかと思う。タイザン5『タコピーの原罪』。 地球に降り立ったハッピー星人・タコピー。少女・しずかに助けられ、様々な「ハッピー道具」でしずかの笑顔を取り戻そうとするが――。 貧困、いじめ、ネグレクト・・…

前野ひろみち『満月と近鉄』(角川文庫)

昔むかし、神武天皇が日向から大和をめざして東征してきたとき、大阪湾で上陸を阻止したのが登美長髄彦。その拠点は生駒にあったという。八咫烏に導かれた神武にまさかの紀伊山地越えの奇襲に遭い、大和を征服されて殺されてしまったが、奈良県生駒市が生ん…

伊坂幸太郎『マリアビートル』(角川文庫)

伊坂幸太郎の『マリアビートル』がハリウッドで映画化されるらしい。主演はブラッド・ピットとのこと。実は読んだことなかったので、この際、読むことに。 東北新幹線「はやて」の車内で繰り広げられる、殺し屋たちの物語――。 とにかく疾走感あふれる小説で…

今村翔吾『幸村を討て』(中央公論新社)

NHK大河ドラマは「鎌倉殿の13人」がなかなかいい感じですが、三谷幸喜がその前に書いたのが「真田丸」。草刈正雄が「げんじろ~!」と叫ぶ声が未だに耳に残っています。 本作は「今村版真田太平記」ともいうべきもので、大坂の陣での真田左衛門佐幸村の不…

五味文彦=本郷和人編『現代語訳 吾妻鏡(5)征夷大将軍』『同(6)富士の巻狩』(吉川弘文館)

久々の『現代語訳 吾妻鏡』。 第5巻「征夷大将軍」には建久元年(1190年)から建久3年(1192年)までを収録。 この期間中の特筆すべき出来事は、やはり頼朝の上洛であろう。御家人やその郎党まで含めると、1000人近くもの規模に及ぶ。吾妻鏡で…

新川帆立『剣持麗子のワンナイト推理』(宝島社)

「ともあれ、ミステリーの世界に、新たなスタープレーヤーの登場である。 剣持麗子の次の活躍が、今から待ち遠しい。」(2021.1.20) 『元彼の遺言状』で、剣持麗子と新川帆立が颯爽とデビューしたときの感嘆のとおりに、あれよあれよという間に早くもシリー…

村山早紀『風の港』(徳間書店)

今年の本屋大賞は逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』が受賞した。僕がこの本を読んだのは昨年12月。その時、まさかウクライナの地が再び戦火に巻き込まれるなどとは、思いもよらなかった。あらためて、小説の重さを思う。 --- 羽田空港第1ターミナルを利用…

苅谷剛彦『学校って何だろう』(ちくま文庫)

新年度が始まりました。っていうか、何で年度は4月始まりなんだろう・・・? 個人的には、春休みこそ長期休暇であるべきだと思うし、そうなると9月入学の方が合理的。せめて、2月終業4月始業、あるいは3月終業、5月始業がいいと思うのです。 そんな話を公立…

Filmarks『世界・夢の映画旅行』(パイインターナショナル)

ものすごく忙しくなったらこれ読んで心を癒そう。そう思っていた本である。『世界・夢の映画旅行』。 55本の映画を取り上げて、それぞれの舞台となった場所の風景を収めた写真集である。映画の選定は、映画レビューサービスのFilmarksが担当。 仕事がひと…

辻村深月・乾くるみ・米澤穂信・芦沢央・大山誠一郎・有栖川有栖『神様の罠』(文春文庫)

子どもたちの春休み。妻の実家に帰っておりました。野球を始めた長男と、ZOZOマリンと神宮に行ってきました。神宮寺つばめ刑事は見つかりませんでしたが、たくさんの笑顔を見て元気になってきました。 ・・・で、今週の読書というのが新幹線の中で読んだ…

久々のコミック3選

ものすごく忙しかった(というかまだ忙しい)ので、久々のコミック3選! 芥見下々『呪術廻戦0 東京都立呪術高等専門学校』(集英社) 今年最初に見に行った映画が、実は「呪術廻戦0」だった。 芥見下々『呪術廻戦0 東京都立呪術高等専門学校』 原作は読…

千正康裕『官邸は今日も間違える』(新潮新書)

大先生、3年間、おつかれさまでした! 退院したら、時間がなさすぎて本が読めない。 岩波新書の『検証 政治改革』がけっこうおもしろかった。30年間の日本政治史でもあり、政治改革を進めるにつれて、その弊害ともいうべき、官邸への権力の集中、野党の弱…

永井路子『炎環』(文春文庫)

ついにこれにも手を出した。永井路子『炎環』。 源頼朝の挙兵から鎌倉幕府成立、そして北条家の覇権までを描いた歴史小説である。 4編の作品からなる連作短編集であり、1作目の「悪禅師」では阿野全成、2作目の「黒雪賦」では梶原景時、3作目の「いもう…

岡田憲治『政治学者、PTA会長になる』(毎日新聞出版)

虫垂炎の手術で入院している。 お見舞いもなく、フロア間の行き来も禁止。痛み止めさえ効いていれば、あとはふつうに暮らせているので、面会用のテーブルを独占して、一日本を読んで過ごすことができた。悪くない。 ようやく『同志少女よ、敵を撃て』を読む…

ジッド『法王庁の抜け穴』(三ツ堀広一郎訳・光文社古典新訳文庫)

去年くらいからなんだかフランス文学づいている。今回はこちら。ジッド『法王庁の抜け穴』。 無神論者のアンティム。凡庸な作家のジュリウス。純朴なカトリック信者のアメデ――。「幽閉されたローマ法王を救い出す」という壮大な詐欺計画の下、社会階層も価値…

吉野万理子『階段ランナー』(徳間書店)

このあいだ、『鴨川ランナー』という京都本が出たと思ったら、今度は『階段ランナー』という京都本が出てきた。 それぞれに心に傷を負った横浜の高校生・広夢と瑠衣が、退職した教師・高桑(タクワン先生)の「階段ブログ」を通して、少しずつ互いを知り、優…

五味文彦=本郷和人編『現代語訳 吾妻鏡(3)幕府と朝廷』『同(4)奥州合戦』(吉川弘文館)

引き続き、『現代語訳 吾妻鏡』。 第3巻「幕府と朝廷」は文治2年(1186年)から文治3年(1187年)までを描く。 源平合戦も終わり、平和な世の中に・・・とはいかないのが歴史の常。前年に源義経・源行家追討の宣旨が頼朝に下され、義経は行方をく…

いしいまき『低収入新婚夫婦の月12万円生活』(オーバーラップ)

フリーの漫画家の妻と、脱サラしてパン屋を開いた夫。生活費は月12万円(生活保護よりも低い)。 そこには、たしかに明るくて仲良くて、100円ショップとサブスクをうまく活用しながら、つつましく暮らす夫婦の、「ぜいたくだね~」「めぐまれてるよ~」と足…

五味文彦=本郷和人編『現代語訳 吾妻鏡(1)頼朝の挙兵』『同(2)平氏滅亡』(吉川弘文館)

「ビギナーズ・クラシックス 日本の古典」シリーズ『吾妻鏡』が予想以上に面白かった。1週間くらい逡巡した結果、ついにこちらに手を出すことに。五味文彦=本郷和人編『現代語訳 吾妻鏡』。 吾妻鏡の全訳である。全16巻。さすがに全部読みとおすのは無理…

鴨長明『方丈記』

ロシアのウクライナ侵攻の前に、心穏やかに過ごすのはちょっとしんどい。 ゆく河の流れは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人と栖と、又かくのごとし。 「方丈記…