村山早紀『風の港』(徳間書店)

今年の本屋大賞は逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』が受賞した。
僕がこの本を読んだのは昨年12月。その時、まさかウクライナの地が再び戦火に巻き込まれるなどとは、思いもよらなかった。
あらためて、小説の重さを思う。

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羽田空港第1ターミナルを利用する際に、必ず立ち寄る書店がある。それほど大きくないのだけれど、品ぞろえがなかなか良い。

その書店がモデルになった短編が、村山早紀さんの新刊に収められているという。しかもこのことを知ったのは、なんと、羽田空港へ向かう途中に、たまたま目にした村山早紀さんご本人のツイート。これは、読まねば。

早速モデルになった書店に行ってみると、これまたなんと、サイン本が平積みになっていたので、迷わず購入。村山早紀『風の港』。作者のメッセージカードもいただいて、かなり得した気分になる。

とある空港(モデルは羽田空港)を舞台にした連作短編集である。前の話がそのまま後の話へと続いていく感じが、なんだか新鮮である。

第1話「旅立ちの白い翼」から、村山早紀ワールド全開。そして、これに続く第2話「それぞれの空」が、書店を舞台にした話。こういう、リアルな世界と不思議な世界をボーダーレスに描く世界観、いいなあ。

もちろん他の話もすごくいい話である。いつか時間が取れたら、ただ何をするでもなく、羽田空港のホテルに宿泊してみたい。

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村山早紀『風の港』


(ひ)