2022-01-01から1年間の記事一覧

佐藤優『教養としてのダンテ「神曲」<地獄篇>』(青春新書)

ダンテ『神曲』を全巻通して読んだことがあったけれど、正直、結構つらかった。「地獄篇」と「煉獄篇」では主人公ダンテが「歩く」→「亡者に会う」→「話を聞く」→「歩く」を延々と繰り返す(しかも亡者のほとんどは現代人の僕らにとってなじみが薄い)。よう…

ミハイル・ゴルバチョフ『我が人生 ミハイル・ゴルバチョフ自伝』(東京堂出版)

原書が刊行されたのは2017年。日本語訳が出されたのが2022年7月、そして著者は翌8月に91歳で亡くなった。 本書は文字通りソ連最後の指導者ゴルバチョフ氏による回顧録である。北コーカサス地方の寒村に生を受けたミハイル少年が、農場で働きながら学問を修め…

次の次にくる!?コミック3選

こざき亜衣『セシルの女王』(ビッグコミックス) 『あさひなぐ』のこざき亜衣さんが次に挑むのは、なんと、16世紀イングランド! こざき亜衣『セシルの女王』 地方の地主層(ジェントリ)の息子、ウィリアム・セシル。父に連れられて登城したが、そこで君…

大井篤『統帥乱れて 北部仏印進駐事件の回想』(中公文庫)

著者は帝国海軍の海軍大佐であり、アメリカ留学経験もあるいわゆる知性派幕僚のひとりである。その著者が第二遣支艦隊参謀として南シナ海での任務に当たっていた1940年の回想である。この年の9月、近衛内閣は援蒋ルートの遮断のために北部仏印に進駐し、これ…

新海誠『小説 すずめの戸締まり』(角川文庫)

先日発表された「次にくるマンガ大賞2022」。コミックス部門1位に選ばれたのは、つるまいかだ『メダリスト』でした! おめでとうございます!!第1巻からこつこつと読み進めていたファンとしては嬉しい!まだまだ粗削りなんだけど、熱量だけはどのマン…

野崎昭弘『詭弁論理学』(中公新書)

前半は「強弁」と「詭弁」について。後半では三段論法やパラドックスなどに踏み込む。練習問題もついていて、ほんとうにわかりやすい。 本書が書かれたのが1976年、著者40歳のときである。2017年に改版が出され、早くも5刷。 本書が興味深いのが、半世紀前に…

小池和子『カエサル―内戦の時代を駆けぬけた政治家』(岩波新書)

『内乱記』を読んだ勢いで、カエサルの生涯についてきちんと知りたいと思い、読んでみることに。小池和子『カエサル―内戦の時代を駆けぬけた政治家』。 岩波新書から出ているカエサルの評伝である。 塩野七生『ローマ人の物語』では情緒豊かに描かれた英雄・…

万城目学『あの子とQ』(新潮社)

本屋に行ったら、ポップな表紙に目が行った。 え、万城目さん・・・? そのままレジへ。 「目が覚めて、まぶたを持ち上げたら、そこに何かが浮かんでいた。」 主人公の弓子は高校生。17歳の誕生日を前に、両親から驚きの宣告をされる。正体を隠して暮らす日…

カエサル『内乱記』(高橋宏幸訳・岩波書店)

この夏の自分用課題図書。カエサル『内乱記』。 カエサルが自ら書き記した、ポンペイウスとのいわゆるローマ内戦の記録である。 『ガリア戦記』はかなり前に読了していたのだが、なかなかその続編に当たる『内乱記』には手が出なかった。そうこうしているう…

平山周吉『満洲国グランドホテル』(芸術新聞社)

先週紹介した『女三人のシベリア鉄道』には、1章だけ、満洲の旅が差し挟まっていた。韓国併合後は釜山に渡って朝鮮を抜け、南満洲鉄道、東清鉄道を経てシベリア鉄道に合流するという経路がよく利用された。著者の森まゆみ氏も、大連からハルビンまで特急列車…

西川靖二『韓非子』(角川ソフィア文庫)

9月に講談社学術文庫から『韓非子』の全現代語訳が出るらしい。これまで文庫本レベルで入手可能だったのは岩波文庫版の原文・訳注付き(全4巻)だけで、ハードルがちょっと高かったので、これはありがたいかも。 実際に読むかどうかはまた9月に考えるとし…

森まゆみ『女三人のシベリア鉄道』(集英社文庫)

「シベリア鉄道」と聞くと、大瀧詠一の歌のせいかもしれないけれど、無性に旅情を掻き立てられる。ましてや、与謝野晶子と宮本百合子と林芙美子がたどったシベリア鉄道の旅の足跡を、21世紀に追体験した旅行記があると知って、アマゾンでポチッとしてしまっ…

プラトン『ゴルギアス』(中澤務訳・光文社古典新訳文庫)

ちくま新書に佐々木毅『政治学の名著30』という本があって、まあタイトルどおり佐々木毅が政治学の名著を紹介する本なのだが、これの巻頭を飾るのが、プラトン『ゴルギアス』。・・・渋い。渋すぎる。 ということで以前から気になっていたのだけれど、今般…

赤尾芳男『計算力が強くなるインド式すごい算数ドリル』(池田書店)

すみません。今週は本業の方が死ぬほど忙しかったので、なんか全然関係ないことを考えたくなって、インド式計算にはまってました。おもしろかった。そして同時に日本のソロバンのすごさがあらためてわかった。 計算力が強くなるインド式すごい算数ドリル 作…

嶋田博子『職業としての官僚』(岩波新書)

日本の官僚制度についての話題の本。嶋田博子『職業としての官僚』。著者は長らく人事院で勤務されていた方。 官僚(公務員)の働き方(ブラックだとか何だとか)についての本はいくつもあるけれど、こういう官僚制度について俯瞰的に書かれた一般書というの…

ガッサーン・カナファーニー『ハイファに戻って/太陽の男たち』(河出文庫)

『音楽の正体』とか『亀田音楽学校』とか、観てました。またああいう番組、やらないかな。 == ガッサーン・カナファーニーという作家の名前を聞いたのは、恥ずかしながらつい先日のことだ(京都大学の岡真理先生の講演の中にこの本が出てきた)。 1936年、…

フランソワ・デュボワ『作曲の科学』(ブルーバックス)

窪美澄さん、直木賞受賞おめでとうございます!当ブログでも、これまで3冊にわたって紹介してきたところでした。 ・・・光文社古典新訳文庫版の『あしながおじさん』ですか? 持ってますよ(笑)。 ---昔、趣味でキーボードを弾いていたことがあった。左手…

ジーン・ウェブスター『あしながおじさん』(新潮文庫)

大先生。直木賞的中、おめでとうございます!!! == 『アリス』もそうだが、児童文学や映像の形で子どものことに触れたことがあって、話の筋は知っているけれど、実はちゃんと読んだことがないものが、たくさんあることに気がついた。大先生より一周遅れ…

笹山敬輔『ドリフターズとその時代』(文春新書)

これまでありそうでなかった、ドリフターズの本格評伝である。笹山敬輔『ドリフターズとその時代』。 一時代を築いた国民的グループともいえるドリフターズの黎明期から志村けんの死去までを、多くの史料を引用しながら描き出した力作である。 ドリフのルー…

マシュー・ホンゴルツ・ヘトリング(上京恵訳)『リバタリアンが社会実験してみた町の話 自由至上主義者のユートピアは実現できたのか』(原書房)

タイトルを見て、リバタリアン(自由至上主義者)たちが集まって町をつくったけれど、結局公共サービスがぐだぐだになって、うまくいかなかった、って話だろうな、と思いながら、勉強のために購入。 予想に違わず、リバタリアンたちの町づくりは失敗するのだ…

中野京子『名画で読み解く イギリス王家12の物語』(光文社新書)

現代の日本でこういうことが起きるとは・・・。 --- 『セシルの女王』でイギリス王家の歴史に興味を持ったのだが、どうも歴代の王・女王のイメージがつかみづらい。だいたいステュアート家の「ジェームズ1世」→「チャールズ1世」→「チャールズ2世」→「ジ…

山極寿一『京大総長、ゴリラから生き方を学ぶ』(朝日文庫)

総長としての山極教授の評価はさておき、ゴリラの研究者としての評価は高く、松沢教授とともに京大霊長類研の看板教授であった。その霊長類研があっという間に解体され、諸行無常というものを実感する。 その山極教授が総長就任のときに書いたのが本書で、「…

窪 美澄『夜に星を放つ』(文藝春秋)

これまで紹介した本の数は約500冊。ここまでくると、もはやダブらない方が奇跡かも・・・(笑)。 --- 第167回直木賞候補作発表!・・・なのだが、今回は読んだ作品が1作もない。今年の上半期は、吾妻鏡ばかり読んでいたせいかも。 このまま祭りに乗り遅…

芦田均『革命前後のロシア』(自由アジア社)*再版

アリス、やってしまいました、お恥ずかしい・・・汗 『物語ウクライナの歴史』の中に、芦田均元首相が外交官時代にウクライナを訪れたことに触れた一節があって、そこで参照されていたのが本書であった。1950年に文藝春秋社から刊行され、1958年再版とのこと…

土屋健『生命の大進化40億年史 古生代編』(ブルーバックス)

せんせい、ダブり~~!!(笑) napo.hateblo.jp --- 40億年にわたる生命の歴史。土屋健『生命の大進化40億年史 古生代編』。 地球上における生物の進化を、豊富な写真と復元画付きでたどる本である。第1巻に当たる本書は、生命誕生からペルム紀までの古…

ルイス・キャロル(河合祥一郎訳)『不思議の国のアリス』(角川文庫)

ある日、アリスが土手で座っていると、白いウサギが懐中時計を見ながら「遅刻だ遅刻だ~~」と走ってきて、穴に飛び込んでいきました。アリスもウサギを追いかけて、穴に飛び込みました・・・。 子どものころに読んだ、絵本。不思議な不思議なアリスの冒険の…

苫野一徳『ルソー 社会契約論』(別冊NHK100分de名著・読書の学校)

かなり前にルソー『社会契約論』を読んだのだが(今でも手元にある)、途中からよく分からなくなってきた記憶がある。・・・っていうか「立法者」って何? これは一度、分かりやすい入門書を読んだ方が良いのでは――。そう思っていたところにこの書の存在を知…

中澤篤史『運動部活動の戦後と現在 なぜスポーツは学校教育に結び付けられるのか』(青弓社)

新世界といえば、劇団ヨーロッパ企画の作品に「来てけつかるべき新世界」というのがありましてね、近未来のドローン飛び交う新世界の串カツ屋の娘がですねぇ・・・。 本を読んだ感想を人の目につくところに書く、というのは、あくまで私的な行為として適当に…

伊藤計劃『ハーモニー』(ハヤカワ文庫)

オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』の「訳者あとがき」は、伊藤計劃『ハーモニー』の引用から始まっていた。というか、『ハーモニー』の中で『すばらしい新世界』が引用されていた。 『ハーモニー』を読んだのは随分前のこと。内容もかなり忘れてしま…

加藤弘士『砂まみれの名将 野村克也の1140日』(新潮社)

野村克也監督に関する著書は、枚挙に暇がない。 野村監督の輝かしいキャリアの中で、阪神の監督を石もて追われ、氏が失意のうちにプロ野球から離れていた4年間がある。本書は氏が社会人野球のシダックスの監督として、砂埃の舞うグラウンドに立ちながら、心…