嶋田博子『職業としての官僚』(岩波新書)

日本の官僚制度についての話題の本。嶋田博子『職業としての官僚』。著者は長らく人事院で勤務されていた方。

官僚(公務員)の働き方(ブラックだとか何だとか)についての本はいくつもあるけれど、こういう官僚制度について俯瞰的に書かれた一般書というのは、実はなかなかめずらしいのかも。なお、タイトルは当然ながらマックス・ウェーバーのオマージュ。

第1章「日本の官僚の実像」は、日本の現在の官僚の風景を伝える。1980年代の風景との対比もあって、結構読みごたえがある。

第2章「平成期公務員制度改革」は、その名のとおり、近年の制度改革に焦点を当てる。「改革項目のつまみ食いによって、官僚が『家臣』に回帰」との指摘が厳しい。

第3章「英米独仏4か国からの示唆」は、外国の官僚制度との対比である。日本の官僚制度は、知られているように米国のそれとは大きく異なる上、独仏や英ともかなり異なる。

第4章「官僚論から現代への示唆」は、官僚制度のあり方についての様々な見解をまとめた章。どの時代のどの国においても、官僚制をどのように構築するのかは、大きな問題となっている。

冷たいシステム論に終始するわけでもなく、かといって暴露系にぶれることもなく、適度なバランスが心地よい。官僚といえども生身の人間である。その働き方を含めて、官僚制度をどう構築するのが、働き手にとっても、また国民にとっても最善となるのか――。多くの示唆を受ける良書であった。

嶋田博子『職業としての官僚』


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