伊藤計劃『ハーモニー』(ハヤカワ文庫)

オルダス・ハクスリーすばらしい新世界』の「訳者あとがき」は、伊藤計劃『ハーモニー』の引用から始まっていた。というか、『ハーモニー』の中で『すばらしい新世界』が引用されていた。

『ハーモニー』を読んだのは随分前のこと。内容もかなり忘れてしまっているので、この際、再読することに。

「大災禍(ザ・メイルストロム)」と呼ばれる世界的な大混乱を経て、調和の取れた社会に達した人類。病気もほぼ放逐されたユートピアの中で、霧慧(きりえ)トァンら3人の少女たちは――。

予想を次々と上回る展開。ウィットの効いた文体。再読であるにもかかわらず、先が気になり、結局、最後まで一気に読み終えた。『すばらしい新世界』が世に出てから七十余年。ディストピア小説は、ここまで進化した。伊藤計劃、やはりこの人、天才だ。

2009年3月没。早世が本当に惜しまれるSF作家であった。

伊藤計劃『ハーモニー』


(ひ)