西川靖二『韓非子』(角川ソフィア文庫)

9月に講談社学術文庫から『韓非子』の全現代語訳が出るらしい。これまで文庫本レベルで入手可能だったのは岩波文庫版の原文・訳注付き(全4巻)だけで、ハードルがちょっと高かったので、これはありがたいかも。

実際に読むかどうかはまた9月に考えるとして、とりあえずいつもの「ビギナーズ・クラシックス」シリーズで予習をすることに。

中国戦国時代の法家である韓非。その著書とされる『韓非子』のビギナーズ向け解説書である。

人は道徳に従って行動すると考える儒家孟子性善説を唱え、荀子性悪説を主張した。しかし法家の韓非は、欲望のままに動くのが人間本来の姿であって、善とか悪などという倫理的な価値判断を交えて論じることに意味はないという。韓非によれば、「利」こそが根源的なところで人間の行動を決めているのである。君主が道徳や愛情に期待するのは意味がない。厳格な法治を行うとともに、常に臣下を監視して操縦し続けるしかない――。

徹底したリアリスト、とでもいうべき存在である。人間関係を極めて冷めた目で見ているという点で、儒家とは対照的である。

国語の教科書でおなじみの「矛盾」や「守株」も『韓非子』のエピソードである。意外と身近にある『韓非子』。様々な形で、2000年後の現在も読み継がれている。

西川靖二『韓非子


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