ガッサーン・カナファーニー『ハイファに戻って/太陽の男たち』(河出文庫)

『音楽の正体』とか『亀田音楽学校』とか、観てました。
またああいう番組、やらないかな。

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ガッサーン・カナファーニーという作家の名前を聞いたのは、恥ずかしながらつい先日のことだ(京都大学の岡真理先生の講演の中にこの本が出てきた)。

1936年、パレスチナ生まれ。12歳の時にユダヤ武装組織の虐殺を逃れて難民となる。パレスチナ解放運動に携わり、自動車に仕掛けられた爆弾により暗殺される(享年36歳)。

本作は、表題となっている2本の中編小説と、5本の短編あるいはエッセイから成り立っている。いずれもパレスチナで起きているこの世の不条理をまとめてドラム缶に詰め込んだような

「太陽の男たち」では、密かに国境を越えてクウェートに向かう男たちの話。窒息死した3人の男の死体は道すがらゴミの山に捨てられる。密入国を手伝った最後に男が叫ぶ。「なぜおまえたちはタンクの壁を叩かなかったんだ・・・」。難民キャンプで窒息死しようとしている難民たちへの蜂起の呼びかけである。

「ハイファに戻って」は、生まれたばかりの息子を置いて逃げたパレスチナ人の夫婦が、その子に遭遇してしまう。息子はユダヤ人として成長し、これから兵役に就いて自分たちに銃を向けるのだ。

 

自分がパレスチナに行ったのは、25年前のことだ。
まだ和平に一縷の望みを見いだそうとしていたあのころから、事態は絶望的に悪化している。
現在進行形のウクライナ情勢ですら、最近は報道で見聞きする機会が大きく減った。いわんやパレスチナ問題をや。

 

村上春樹の「エルサレム賞」受賞演説を思い出す。
<高くて頑丈な壁と、壁にぶつかれば壊れてしまう卵があるなら、私はいつでも卵の側に立とう>

 

カナファーニーの魂の慟哭。
卵の側に立つ勇気と覚悟を問われた。

(こ)