ジーン・ウェブスター『あしながおじさん』(新潮文庫)

大先生。直木賞的中、おめでとうございます!!!

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『アリス』もそうだが、児童文学や映像の形で子どものことに触れたことがあって、話の筋は知っているけれど、実はちゃんと読んだことがないものが、たくさんあることに気がついた。大先生より一周遅れではあるけれど、これから少しずつ、そっちの方にも目を向けていこうと思う。

で、手にしたのが『あしながおじさん』。ときどき『赤毛のアン』とごっちゃになるのだが、孤児院出身の主人公が奨学金を受けて大学に通い、最後は大富豪に見初められて結婚する話。

いやぁ、それだけじゃなかったのね。

もちろん主人公ジュディ(ジルーシャ)の機転の利いて底抜けに明るい性格が読者を惹きつけているのだけれど、彼女を通してウェブスター女史は、1910年代初頭のアメリカ社会を描いているのでもあるんですね。
女性に選挙権がないことへの憤り。貧困問題に関心を持つことは「社会主義者」であり、富豪たちにとっては、自らの富も巷にあふれる貧困もまた「神の思し召し」。自らの特権的地位を当然視し、周囲が自分に奉仕する義務があるかのように振る舞う、勘違いした良家の子女たち。「もしも」という絶対にありえないようなことのたとえのひとつに「アメリカと日本が戦争する」ことが入っていたり、などなどなど。

とにかく、200ページにおよぶ長大な伏線を、最後の6ページで一気に回収し、あふれんばかりのハッピーエンドで大団円を迎えさせるやり方は、ずるいよ、うますぎるよ。

昭和29年刊行の松本恵子訳。すでに100刷。
本書は大先生が光文社古典新訳文庫で読んで紹介していないことを確認済み。

(こ)