カエサル『内乱記』(高橋宏幸訳・岩波書店)

この夏の自分用課題図書。カエサル『内乱記』。

カエサルが自ら書き記した、ポンペイウスとのいわゆるローマ内戦の記録である。

ガリア戦記』はかなり前に読了していたのだが、なかなかその続編に当たる『内乱記』には手が出なかった。そうこうしているうちに岩波書店から新訳が出て、その新訳もぼちぼち店頭から姿を消し始めたため(本の寿命は短い・・・)、このタイミングで読み始めた。

冒頭は「カエサルの書簡は両執政官のもとに届けられた。」という唐突な出だしで始まっていて、かなり面食らう(実際、欠落しているとの説もある。)。そこからレントゥルスとスキーピオーの演説、そして元老院からカエサルに対する最後通牒へと、自体は一気に「開戦前夜」になだれ込む。

これに対するカエサル。兵士たちを前に演説をし、そして軍事行動に出る。ローマ内戦の始まりである。なお『内乱記』には「ルビコン川」も「賽は投げられた」も出てこない(ちょっと意外)。

ポンペイウスの逃走。西部戦線での勝利。デュッラキオンでの敗北と、パルサーロスの戦いでの勝利。『内乱記』は、ポンペイウスが暗殺され、カエサルがエジプト軍との戦争に引きずり込まれたところで、幕をおろす。

「敵」と戦って平定していれば済んだ『ガリア戦記』とは異なり、『内乱記』は文字通り内乱であり、戦っている相手は同胞である。それゆえ『内乱記』は、カエサル自らの軍事行動の正当性について、極めて注意深く描かれている。『内乱記』は、単なる戦いの記録ではなく、政治的な書物でもあった。

カエサル『内乱記』


(ひ)