五味文彦=本郷和人編『現代語訳 吾妻鏡(1)頼朝の挙兵』『同(2)平氏滅亡』(吉川弘文館)

「ビギナーズ・クラシックス 日本の古典」シリーズ『吾妻鏡』が予想以上に面白かった。1週間くらい逡巡した結果、ついにこちらに手を出すことに。五味文彦本郷和人編『現代語訳 吾妻鏡』。

吾妻鏡の全訳である。全16巻。さすがに全部読みとおすのは無理っぽいので、まあ読めるところまで読んでみよう、という気持ちでチャレンジ。

第1巻「頼朝の挙兵」では、治承4年(1180年)4月から寿永元年(1182年)までを取り上げている。

以仁王の令旨で幕を開ける「吾妻鏡」。頼朝の挙兵、石橋山での敗北、富士川の合戦、そして黄瀬川での頼朝・義経の対面。知られているエピソードが次々と語られる。

読んでいて思ったのだけれど、頼朝、結構気が短い。そして女好き。初代将軍なんだからもう少し神格化されてもよさそうなのに、意外とそうでもないような場面がちょくちょく出てくる。

例えば、「新田重主が頼朝の怒りを被った。」から始まる日があるので何かと思ったら・・・頼朝が女性関係でへそを曲げただけであった(寿永元年7月14日)。頼朝、何やってんだ(笑)。

「亀の前事件」も結構詳細に描かれている。頼朝が女(亀の前)を囲っているのを北条政子が気づき、牧時親(北条時政の妻の兄弟)に命じて女の屋敷を破却させたところ、頼朝が逆切れして牧時親を侮辱し(もとどりを切った)、今度は北条時政がこれに腹を立てて伊豆に出奔した・・・という出来事である(寿永元年11月10日~14日)。こんなドタバタ、歴史書に載せて果たして誰が得するのか、という感じもする。

それにしても大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は、結構この「吾妻鏡」に忠実である。例えば頼朝は、千葉常胤には「これからは司馬(常胤)を父のように遇したい。」と厚遇して迎え(治承4年9月17日)、その2日後、あわよくば頼朝を討ってやろうと思っていた上総広常には遅参を咎めて従わせる(同月19日)。

また、大河ドラマでは、頼朝の無事を知った北条政子が泣きながら喜んでいた。きっとドラマ上の演出だろうと思っていたら、吾妻鏡にも「悲しみと喜びが入り混じっていた」とある(治承4年9月2日)。

この巻の終わりの方では、源頼家が皆に祝福されながら誕生。のちの人生を思うと、なかなかつらいところがある。

そして第2巻「平氏滅亡」。元暦元年(1184年)から文治元年(1185年)までを取り上げる。まさに源平合戦の年、そして頼朝と義経の心が徐々に離れていく年である。

鎌倉幕府側から描かれた歴史書であるにもかかわらず、義経が単なる悪役に描かれているわけでもないのが興味深い。むしろ腰越状はまるまる引用されていて(文治元年5月24日)、心をうつ。

その後も、弁慶が出てきたり(文治元年11月3日)、静が出てきたりして(同月6日)、なかなか面白い。また、文治元年11月12日には大江広元による「守護・地頭」の献策が登場。小学校で覚えた出来事が吾妻鏡にそのまま出てくると、やはりちょっと嬉しい。

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五味文彦本郷和人編『現代語訳 吾妻鏡(1)頼朝の挙兵』『同(2)平氏滅亡』



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