ついにこれにも手を出した。永井路子『炎環』。
源頼朝の挙兵から鎌倉幕府成立、そして北条家の覇権までを描いた歴史小説である。
4編の作品からなる連作短編集であり、1作目の「悪禅師」では阿野全成、2作目の「黒雪賦」では梶原景時、3作目の「いもうと」では北条政子から見た阿波局、そして4作目の「覇樹」では北条義時をそれぞれ主人公としている。
登場人物の造形がすごく良い。単純な善悪を超えて、冷たい情熱と静かな野望がぶつかり合う。何を考えているのか分からない不気味さが、ひたひたと伝わってくる。
時々、「吾妻鏡」で読んだ逸話が出てきたりして、ちょっと嬉しい。
昭和39年の作品であるが、歴史小説ということもあるためか、全く古さを感じさせない。なお、永井路子さんは本作品で直木賞を受賞。大河ドラマ「草燃える」の原作の1つでもある。
(ひ)