オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』(大森望訳・ハヤカワepi文庫)

伊坂幸太郎さんの新刊! 今回はどうしようかと思っていたけれど・・・面白そうなので読んでみるか~。

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以前読んだオーウェル『1984年』が面白かったので、同じディストピア小説の古典つながりで、今度はこちらを読むことに。オルダス・ハクスリーすばらしい新世界』。

「九年戦争」と呼ばれる最終戦争が終結した近未来。共生・個性・安定をスローガンとする清潔で文明的な世界が形成されたが、その実態は徹底的な階級社会であった。青年バーナードは、休暇で出かけた保護区で「野人」と出会い――。

1932年に発表されたディストピア小説である。すべてのディストピア小説の始祖と言っていいのかもしれない。ただそこで描かれている世界は、『1984年』のような暗さではなく、皆が何らの疑問も抱かず、ハッピーに暮らす平和な世の中。・・・いや、これで本当に良いのかどうか。

途中から何度も出てくるシェークスピアの引用が良い。そういえばこのタイトルも『テンペスト』からの引用である。荒野で生まれ育った「野人」がシェークスピアを暗唱し、一方で文明社会のほぼ誰もシェークスピアを知らない、という逆転現象がおもしろい。

全般的にユーモア(というか皮肉)のあふれる、それでいて知的なディストピア小説であった。

オルダス・ハクスリーすばらしい新世界


(ひ)