青木道彦『エリザベス一世』(講談社現代新書)

こざき亜衣『セシルの女王』(ビックコミックス)が面白い。16世紀のイングランドを舞台にした歴史物語である。タイトルの「セシル」とはウィリアム・セシル、「女王」とはもちろんあのお方。まだ第1巻が出たばかりなのだけれど、これからが楽しみである。

この『セシルの女王』に触発されて、史実をもっと知りたいと思い、こちらを読むことに。青木道彦『エリザベス一世』。エリザベス1世の生涯を軸に、当時のイングランド、そして西欧社会を解説した本である。

激動の16世紀。ヘンリ8世はアン・ブーリンと結婚するため、王妃キャサリンとの離婚を画策し、ついには教皇と断絶してイングランド国教会を設立。そうして産まれたのがエリザベスである。誕生前から既に波乱に満ちていた。

幼い弟・エドワード6世の死去と、義姉メアリ(ブラッディ・メアリ)の女王就任、自身のロンドン塔への幽閉を経て、1558年、エリザベスは25歳の若さで女王に就任する。以後、様々な試練がエリザベスを待ち受ける――。

波乱万丈、というしかない生涯である。外にあっては大国スペインとの対決、内にあってはスコットランド女王メアリ・ステュアートとの微妙な関係。深刻な財政難や、議会からの抵抗にも悩まされた。

当時のイングランドは、まだフランスとスペインという2大強国の中で生き延びようとする小さな国家でしかなかった。産業革命を経て大英帝国が発展するのは、エリザベスの治世から200年も後のことである。

青木道彦『エリザベス一世



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