2021-01-01から1年間の記事一覧
仕事で精神科の先生と長時間話をする機会があった。いろいろと資料を見せてもらいながら、生徒のことでいろいろと相談させていただいた。ぽつりぽつりと紡ぎ出される言葉は決して断定的ではないのだが、そこからは、その柔らかい物腰とはまったく対照的な、…
ブルボン小林『あの人が好きって言うから…有名人の愛読書50冊読んでみた』(中央公論新社)が面白い。有名人(主として芸能人)の愛読書を読んで紹介するという本なのだけれど,これが書評としても,また芸能人評としても読んでいて楽しい(なぜか滝クリの…
グテーレス国連事務総長が「世界はコロナは戦争状態だ」と訴えたそうだ。 きっと、第2次世界大戦を、イギリスはこんな感じで、アメリカはこんな感じで戦ったんだろうなあ、と思わせる。そして日本もこんな感じで戦争して、(だから)負けたのだろう。 昭和史…
「入営の挨拶,出征兵士への激励の演説,戦地への手紙,そして『遺書』の書き方まで――日本人は『マニュアル』で戦争を学んだ。」 明治から太平洋戦争期までの間,軍隊での生活や,手紙文例集,式辞・挨拶集などの様々な「マニュアル」が一般の書店で市販され…
八ヶ岳山麓の、高原の園芸店。 母、姉、妹。それぞれの恋人、夫、不倫相手。父は25年前、家族を捨てて出て行った。 なんとか保たれていた危うい均衡が、父の突然の出現を機に、あちこちで壊れてゆく。父を捨てた女も、妹の不倫相手の家族も、また。 ずっと…
昨年,白井カイウ原作・出水ぽすか作画「約束のネバーランド」が完結した。コミックス全20巻。週刊少年ジャンプに連載された漫画としては,いろいろな意味で異色の作品であった。 その『約束のネバーランド』を英米文学者が専門の立場から読み解いた本が,…
「あのこは貴族」の映画を観てきました。後半かなり原作と変わっていて、好みが分かれるだろうなぁ。どちらの世界観もいいと思う。 さて。 ここは餅湯温泉。海と山に挟まれ、遠く富士山を望む、新幹線こだま号の停車駅。山側の元湯温泉とはライバル関係にあ…
浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』が予想以上に面白かったので,著者の他の作品をと思い,読んだのがこちら。『教室が、ひとりになるまで』。 高校で3名の生徒が立て続けに死亡。垣内友弘は,同級生の白瀬美月から,3名は「死神」に殺されたと告げられる。…
週刊東洋経済のGW合併特大号。1冊まるまる書評で、あれもほしくてこれも読みたくて、ああ・・・。 さて、 ようやく読みましたよ、ロッキード。 ベストセラー作家の真山仁氏が、満を持してノンフィクションを上程。それも戦後最大の謎のひとつ、ロッキード…
ここ数か月で読んだエンタメ小説の中で,最も面白かった作品といっても過言ではない。浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』。 IT企業「スピラリンクス」の新卒採用。最後まで残ったのは6人の大学生。最終選考のグループディスカッションで「事件」が起こる。…
華子は東京・松濤の令嬢である。何不自由なく育ち、カトリック女子校を出て、同級生たちが次々と結婚していく中、婚活に焦っている(第1章「東京」)。美紀は富山から猛勉強で慶応に合格したが、実家からの支援がなくホステスをして学費を稼いでいたものの中…
戸田慧「英米文学者と読む『約束のネバーランド』」(集英社新書)の目次を眺めていたら,「不思議の国のアリス」が出てきた。・・・「ピーター・パン」は分かるが(ネバーランドなので),不思議の国のアリス? ちゃんと通して読んだことがなかったので,こ…
そうですか、もう10年経ちますか・・・。読も。 通勤経路から一気に書店が2冊消えてしまった影響はかなり大きく、ふらっと立ち寄って本を手にする日常が奪われてしまった。百万都市・京都ですらこれである。こうして書評を参考にアマゾンや楽天ブックスをポ…
今年度の本屋大賞は,町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』が見事に獲得!おめでとうございます!!「わたしは,あんたの誰にも届かない52ヘルツの声を聴くよ。」・・・届きましたよ。52ヘルツの声が。 ---さて。 あのシリーズが8年ぶりに帰ってきた!…
カラスは賢いという。目がよくておしゃれで子煩悩で・・・などと、身近な鳥だけにそれなりに聞きかじった知識もある。 著者は大学でカラス研究に出会い、現在は起業して、カラスの鳴き声や模型などを使ってカラスとコミュニケーションすることによって、害を…
いつの間にか本屋大賞の発表が来週に迫っていた。ということで駆け込み読書。伊吹有喜『犬がいた季節』。 高校に迷い込んだ一匹の白い犬。この犬を軸とした,連作短編集である。 第1話「めぐる潮の音」から引き込まれた。高校三年生・塩見優花の物語である…
「麒麟ロス」になる暇もなく「青天を衝け」が楽しい。Twitterのスマホ画面からのいろんな人による解説コメントを片手に、NHK大河ドラマでないとできない細部にこだわった作り込みを毎週堪能している。 渋沢翁を主人公とした小説はいろいろとあるが、その中で…
前の職場では,年に一度,ミャンマーからの研修生を受け入れていた。僕も「ミンガラーバー(こんにちは)」「チェイズーティンバーデー(ありがとう)」などの基本的な挨拶を覚えたりしながら,コミュニケーションを取った。 そのミャンマーが,今,国軍によ…
4月4日は復活祭。おめでとうございます。ということで、キリスト教関係の本を持ってきました。 本書は、アメリカ教育社会学会賞を受賞した、マルチレベル分析の古典。しかし統計分析だけでなく、アメリカのカトリック学校のフィールド調査にもなっていて、実…
今,仕事がめちゃめちゃ忙しいっ!忙しい時には漫画!ということで,先月に引き続き,コミック4選!! ・山田鐘人=アベツカサ『葬送のフリーレン』(小学館) 魔王を倒した勇者一行の「その後」を描く,魔法使いのエルフ・フリーレンを主人公とした物語。…
また、NDL9類から遠ざかる日々・・・。 高校1年生の日本史A(近代史)が予想に違わず(汗)第2次世界大戦までたどり着かなかったらしく、一瞬で日本が太平洋戦争始めて負けて、戦後史は自習プリントが配られて終わった。しかもそれが学年末試験範囲だったの…
なぜかちょっとした『小公子』ブームである。昨年6月に新潮文庫から,今年1月に角川文庫から,そして今月は光文社古典新訳文庫からそれぞれ新刊が出た。 実は子供の頃に読まないまま大人になってしまったので,この際読むことに。選んだのは新潮文庫版。 …
いろいろとあるだろうということは承知の上で、札幌地裁の違憲判決には震えました。 さて、「学びなおす○○」と「教科書で教えてくれない○○」という本は数え切れないほどあって、学校教育に対する態度としてはコインの裏表だと思うこともある。 難しいことを…
『土佐日記』を上げてみたけれど,でもやはり,こちらにも言及させてほしい。様々な紆余曲折を経て,3月8日(月)に公開された『シン・エヴァンゲリオン劇場版 :||』。 僕は特にコアなファンというわけではないのだが,たまたまスケジュールが空いていたこ…
土佐から京までの船旅を描いた「土佐日記」。以前,池澤夏樹個人編集の日本文学全集で読んだ(堀江敏幸訳)。ひらがなばかりのチャレンジングな訳文で,まあそれはそれで良かったのだけれど,一度,きっちり読みたいなあとも思っていた。 そこで今回,角川ソ…
ぜったいに 忘れては いけない 南三陸日記 (集英社文庫) 作者:三浦 英之 発売日: 2019/02/20 メディア: 文庫 (こ)
谷崎潤一郎の「文章読本」がよかったので,次は実践編をと思い,未読作の中から『吉野葛・盲目物語』を読むことに。 「吉野葛」は,随筆かと思って読んでいくと,友人である「津村」の物語が挿入され,やがて母への思慕の情が美しく描かれるという展開。失わ…
「人新世」とは、人類が地球の地質や生態系に重大な影響を与える地質年代のことである。肥大化した人類の活動は、気候変動をもたらし、結果的に人類の文明は破滅へと向かわざるを得ない。資本主義はこの流れを加速させるだけであり、資本主義の枠内でこの問…
つるまいかだ『メダリスト』第2巻,読んだ。まさか漫画で,しかもスケート漫画でこれほど涙ぐむことになるとは。「私はもう 前の私じゃない」一つ一つのセリフ,一つ一つの表情が,心に刺さる。 ---さて。 谷崎潤一郎『陰翳礼讃・文章読本』が書店の文庫コ…
『じんかん』読んでしびれています。 少年ジャンプでまさかの中先代が主人公で連載開始と、ますます中世が熱くなっていますが(なんでも本郷和人氏監修なんだとか)、 そのトリガーを引いた呉座勇一氏も(『応仁の乱』)亀田俊和氏も(『観応の擾乱』)、し…