戸田慧『英米文学者と読む「約束のネバーランド」』(集英社新書)

昨年,白井カイウ原作・出水ぽすか作画「約束のネバーランド」が完結した。コミックス全20巻。週刊少年ジャンプに連載された漫画としては,いろいろな意味で異色の作品であった。

その『約束のネバーランド』を英米文学者が専門の立場から読み解いた本が,こちら。戸田慧『英米文学者と読む「約束のネバーランド」』。全3章からなる考察本にして,英米文学・文化の格好の入門書でもある。

第1章は「イギリス文学・文化とのつながり」。「約束のネバーランド」という作品が,実はイギリス文学・文化への深い理解に基づいて書かれたのではないかということを丹念に示していく。また,第2章の「原初信仰とユダヤキリスト教」では,作品の世界観がいかにユダヤキリスト教の知識に裏打ちされているのかを論じる。

そして第3章は「ジェンダー」。「約束のネバーランド」が異色の作品であることの理由の一つは,まさにこのジェンダー観にあるといっていいだろう。

あらゆる点で画期的な作品であった「約束のネバーランド」。そのすごさをきっちりと言語化した本書は,「約束のネバーランド」ファンにとって必読の書である。


(ひ)