ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』(河合祥一郎訳・角川文庫)

戸田慧「英米文学者と読む『約束のネバーランド』」(集英社新書)の目次を眺めていたら,「不思議の国のアリス」が出てきた。・・・「ピーター・パン」は分かるが(ネバーランドなので),不思議の国のアリス

ちゃんと通して読んだことがなかったので,この際読んでみることに。

白いウサギを追いかけて,不思議の国へ迷い込んだアリス。大きくなったり,小さくなったり,また大きくなったり,小さくなったり・・・。ああ,そんな話だったか。

ところで「不思議の国のアリス」といえば,言葉遊びである。というか,ダジャレ。もちろん英語のダジャレなので,翻訳文だとなかなか(というか,まったく)伝わらない。

例えばニセウミガメとの会話のシーン。原文はこう。

"... The master was an old Turtle -- we used to call him Tortoise --"
"Why did you call him Tortoise, if he wasn't one?" Alice asked.
"We called him Tortoise because he taught us," said the Mock Turtle angrily.

これを直訳するとこうなる。

「…先生は年配のウミガメだったが,僕らはリクガメと呼んでいた…」
「なんでウミガメなのにリクガメと呼んでいたの?」アリスは尋ねた。
「僕らを教えていたからリクガメと呼んでいたんだろ。」ニセウミガメは怒って言った。

・・・何がダジャレなのかまったく分からない(笑)。補足するとこうなる。

「…先生は年配のウミガメ(タートル)だったが,僕らはリクガメ(トータス)と呼んでいた…」
「なんでウミガメなのにリクガメと呼んでいたの?」アリスは尋ねた。
「僕らを教えていた(トートァス)からリクガメ(トータス)と呼んでいたんだろ。」ニセウミガメは怒って言った。

・・・ダジャレの翻訳は難しい。というか不可能だ。そもそも,"We called him Tortoise because he taught us" というセリフ自体,リズム感があって楽しいところなのだが。

ちなみに本書(河合祥一郎訳)では128ページに出てくる。無理やり日本語のダジャレに置き換えていて・・・翻訳者の苦労が偲ばれる。

不思議の国のアリス (角川文庫)

不思議の国のアリス (角川文庫)


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