伊吹有喜『犬がいた季節』(双葉社)

いつの間にか本屋大賞の発表が来週に迫っていた。ということで駆け込み読書。伊吹有喜『犬がいた季節』。

高校に迷い込んだ一匹の白い犬。この犬を軸とした,連作短編集である。

第1話「めぐる潮の音」から引き込まれた。高校三年生・塩見優花の物語である。家族との確執,将来への不安,そして男子生徒へのほのかな思い・・・。ひょっとしてこれは,作者の自伝的要素も若干含まれているのではなかろうか,などと考えてしまうほどリアルで切ない。

友情をテーマにした第2話,阪神淡路大震災を取り上げた第3話,「連作短編集の4話目は変化球」の法則(個人の感想です)どおりの第4話に引き続き,第5話「永遠にする方法」がまた,読ませる(泣かせる)。

読了後,感慨に浸りながらぼーっと表紙を眺めていたところ・・・ひょっとして・・・おお(笑)。こういう遊び心も含めて,よい本です。

犬がいた季節

犬がいた季節

  • 作者:伊吹 有喜
  • 発売日: 2020/10/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

(ひ)