谷崎潤一郎『陰翳礼讃・文章読本』(新潮文庫)

つるまいかだ『メダリスト』第2巻,読んだ。
まさか漫画で,しかもスケート漫画でこれほど涙ぐむことになるとは。
「私はもう 前の私じゃない」
一つ一つのセリフ,一つ一つの表情が,心に刺さる。

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さて。

谷崎潤一郎『陰翳礼讃・文章読本』が書店の文庫コーナーに平積みにされていた。実はまだ読んだことがなかったので,これも何かの縁と思い,購入。

「陰翳礼讃」は,いわずと知れた谷崎の日本文化論。陰翳を消す西洋文化と,陰翳を残す日本文化。照明,建築,食べ物から厠まで,自由自在に論じている。

文章読本」は,日本語の文章というものについて書かれたもの。学者ではなく,大作家の手によるものなので,論理的だけでなく,きわめて実践的でもある。代表作の一つ『春琴抄』(句読点が少ない!)につき,一般的な句読点を打つとどうなるか,という対比はなかなか面白かった。句読点だけで,もうまったく別の小説である。

他に「厠のいろいろ」「文房具漫談」「岡本にて」という3編も収録。

巻末の解説は筒井康隆であった。これはこれでまた,一つの作品である。

陰翳礼讃・文章読本 (新潮文庫)

陰翳礼讃・文章読本 (新潮文庫)


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