2020-01-01から1年間の記事一覧

周防柳『蘇我の娘の古事記』(角川春樹事務所)

蘇我氏がけっこう好きだ。ついでに平氏と足利直義も好きだ。幕末の長州は大嫌いだ。 645年の乙巳の変で、入鹿が討たれる。入鹿の娘は、渡来人の船氏の娘コダマとして育てられる。コダマは光を失うが、義兄のヤマドリはコダマの目となり盾となり、ふたりは立…

伊坂幸太郎『逆ソクラテス』(集英社)

緊急事態宣言が解除されて行きつけの本屋が再開したら,真っ先に買おうと思っていた本。伊坂幸太郎『逆ソクラテス』。 小学校を舞台にした,5つの話からなる短編集である。 大人による決めつけ・先入観を扱った第1話「非ソクラテス」。いじめをテーマにし…

出口治明『「教える」ということ』(角川書店)

このあいだ、NHKの「100分 de 名著」に出口さんが出ていたので、文字通り100分間出口さんに教えを受けた。出口さんの読書家ぶりは有名だが、ビジネスの話も交えながら本のことを嬉々として話す出口さんを実際に見ると、立命館はいい人を選んだなあ、と思った…

後深草院二条『とはずがたり』(佐々木和歌子訳,光文社古典新訳文庫)

お手軽な日記文学かと思って買ってみたところ,想像の遥か上を行くハードな内容におののいてしまい,そのままになっていた本。後深草院二条『とはずがたり』。 時は鎌倉時代。後深草院(後深草上皇)の女房を務めていた「二条」の,波乱万丈の自叙伝である。…

佐々木慶昭『日本カトリック学校のあゆみ』(コルベ新書)

Stay Homeのおかげで、東京で大学教育をしている友人の呼びかけで始まった読書会に、京都から参加させてもらうことができた。アメリカ社会学会で学会賞に輝いた Catholic Schools and the Common Good を、上智と聖心と雙葉の関係者で集まって読もうというも…

羅貫中『三国志演義』第3巻・第4巻(立間祥介訳,角川ソフィア文庫)

先週から引き続き,羅貫中『三国志演義』である。 第3巻は,劉備が蜀を獲得して天下三分となるも,関羽を討たれ,張飛も部下に殺され,そして劉備自身も亡くなる。 第4巻は「出師の表」から北伐,諸葛亮の死亡を経て,晋(司馬炎)による三国統一までを描…

桃崎有一郎『「京都」の誕生 武士が造った戦乱の都』(文春新書)

中世関連の新書が元気だけれど、そのエネルギーが院政期~平氏政権にまで拡散してきた。本書は律令国家の「平安京」から中世の「京都」への推移を、都のガードマン・武士のポジションの変化を縦軸に据えながら、院政期の「鳥羽」「白河」「東山」、平氏の拠…

羅貫中『三国志演義』第1巻・第2巻(立間祥介訳,角川ソフィア文庫)

こういう情勢なので書店にはかなり前から行っていないし,そもそも街を出歩いたりすらしていないのだけれど,まあ本だけは読むようにしている。とはいっても新しく買うことはできないので,以前買ったままにしてある本とか,最初の方だけ読んで挫折してしま…

半藤一利・保阪正康『賊軍の昭和史』(東洋経済新報社)

『ふみいいい、ふみいいい』 大先生が意外にも残していたので、それでは私めが、と思っていたら、かぶってしまいました。 そこで、ちょっと前の本だけれど、今読み返したくなって取り出してきたのがこの本。政府が、アベノミクスでもコロナとの「戦争」でも…

凪良ゆう『流浪の月』(東京創元社)

今年度の本屋大賞が4月初旬に発表された。大賞は,凪良ゆう『流浪の月』。 実はこの本,かなり前に購入していた。ただ,読み始めたところあまりにも暗くて重い展開だったため,最初の方で挫折してしまっていた。 今回,大賞を取ったということで,改めて初…

ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史(上・下)』(河出書房新社)

4人のホモ・サピエンスがテーブルを囲んで食事をしている。2匹は大人で、2人は子どもである。この4人が200万年前のサバンナにタイムスリップして投げ出されてしまえば、あっという間に野獣の餌食になるか、食料を得られずに飢え死にしてしまうことだろう。今…

ヴォルテール『寛容論』(斉藤悦則訳,光文社古典新訳文庫)

こんな時代だからこそ,広く読まれてほしい。ヴォルテール『寛容論』。 18世紀のフランス。社会の中で圧倒的多数を占めるカトリックと,少数被圧制者のプロテスタントとの対立が続く中,プロテスタントのジャン・カラスが実子殺しの容疑で逮捕され,ほぼ証…

ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄(上下巻)』(草思社文庫)

20年前に読まなくちゃ、と思ってそれっきりになっていた本書を、この機会に手にする。 もうとっくに読んだよ、という人もいると思うけれど、ご容赦ください。 本書は、文化人類学者の著者が、1970年代にニューギニアの優れたリーダーによって投げかけられた…

山本太郎『感染症と文明』(岩波新書)

気が付けば250回! よく読みましたね~!! ---さて。 せんせいと示し合わせたわけではないのだけれど,僕も感染症についての本を読んでいた。山本太郎『感染症と文明』。 感染症と人類との関係を,「文明」とか「社会」といった切り口から論じた本である…

岩田健太郎『新型コロナウィルスの真実』(ベスト新書)

時節柄、カミュの『ペスト』を読もうと思ったのだが、書店からは消えている。学校の図書館にも『異邦人』はあっても『ペスト』はなかった。Kindleは苦手なのだが、それしかないか。 さて。 本書は4月11日に緊急出版された、神戸大学の岩田教授の語り下ろしで…

気がつけば、250回を超えていた。

2017年(20) 辻村深月『かがみの孤城』(ポプラ社) 神成美輝・百枝義雄『モンテッソーリ流「自分でできる子」の育て方』(日本実業出版社) 柚月裕子『盤上の向日葵』(中央公論新社) サンテグジュペリ『星の王子さま』 池上永一『ヒストリア』(角川書店…

フローベール『三つの物語』(谷口亜沙子訳,光文社古典新訳文庫)

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』,確かに最近よく話題になっていますね。新聞のコラム等でしばしば引用されたり,著者がテレビに出たり。さすがせんせい,先見の明ありです。 ---ヴォルテールの次はフローベールを読もう,ということで,『…

湯浅邦弘『ビギナーズ・クラシックス 中国の古典 呻吟語』(角川ソフィア文庫)

卒業生への言葉に、何か漢籍からかっこいいことでも書こうかと色気を出して、ネットでいろいろ検索していたら、こんなのを見つけた。 人の一生の大なる罪過は 只「自ら是とし自ら私す」の四字に在り (人一生大罪過 只在自是自私四字) 出典は『管子』となっ…

ヴォルテール『哲学書簡』(斉藤悦則訳,光文社古典新訳文庫)

今年の本屋大賞,発表会自体は開催せず,インターネット上で配信するとのこと。状況が状況だけに仕方がないが,でも残念。今年はノミネート10作品中,6作品を読了したが,イチオシはやっぱり,ノミネート前からずっと推している『線は,僕を描く』である…

辻村深月『朝が来る』(文春文庫)

涙腺崩壊。 コメント不能。 朝が来る (文春文庫) 作者:深月, 辻村 発売日: 2018/09/04 メディア: 文庫 (こ)

サン=テグジュペリ『戦う操縦士』(鈴木雅生訳,光文社古典新訳文庫)

ふらりと入った書店でたまたま目にとまった。今の気分に寄り添ってくれるような気がしたので読んでみることに。サン=テグジュペリ『戦う操縦士』。 1940年5月。ドイツ軍の侵攻の前に敗走を重ねるフランス軍。操縦士である「私」は,戦略的に無意味で,…

山田剛史他『Rによるやさしい統計学』(オーム社)

読書日記というよりは、近況報告に近いかも。 == 我が社も3月2日から休校に入りました。とはいいつつも、3月はもともと授業がないので、めちゃくちゃやることがなくなってしまったという感覚はありません。午後からは予定通り、みっちりと校務が入って…

トゥキュディデス『戦史』(久保正彰訳・中公クラシックス)

こんな時こそ重厚な古典をと思っていたところ,たまたま再販になっていたので読んでみた。中公クラシックス版・トゥキュディデス『戦史』。言わずと知れた,ペロポネソス戦争(紀元前431年~404年)を叙述した作品である。 トゥキュディデスはリアリス…

塚原朝子『患者になった名医たちの選択』(朝日新書)

平常運転平常運転と思いつつ、けっこう気は張り詰めているようで、からっきし読んだ本が頭に入ってこない。ゆる系の小説はまったく体が受け付けず、世界恐慌関連の本も読んだけど、何だかいつもと読後感が違う。 そんな中本書は、自身が病気になった医師18人…

マルクス・ガブリエル『世界史の針が巻き戻るとき』(大野和基訳・PHP新書)

こんなときこそ平常運転~。 最近話題のマルクス・ガブリエル。流行に乗ってみたい気もするが,でも難しいかもなぁ・・・と思っていたところ,語り下ろしが出た。『世界史の針が巻き戻るとき』。 今世界に起こりつつあるとする5つの危機,すなわち「価値の…

データスタジアム株式会社 『野球×統計は最強のバッテリーである   セイバーメトリクスとトラッキングの世界 』(中公新書ラクレ)

今はきっと世界史上の転換点なのだろう。20世紀的な世界秩序の断末魔の声なのか。 こんど「スポーツデータ解析コンペティション」というのに生徒が参加することになって、自分も一緒になって統計の勉強を始めることにした(休校期間だし)。 セイバーメトリ…

小梅けいと『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ原作/KADOKAWA)

話題の漫画ということで読んでみた。小梅けいと『戦争は女の顔をしていない』。 原著は,スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチによるドキュメンタリー書籍である。ソ連では,第二次世界大戦に100万人を超える女性が従軍し,しかも戦後は世間から白い目で見…

門井慶喜『自由は死せず』(双葉社)

タイトルから察する通り、板垣退助の一代記。 札付きの悪童であった幼少時代から、幼なじみの後藤象二郎とともに山内容堂に引き上げられ、武市半平太と対峙し、幕末の動乱から御一新を経て戊辰の戦役に身を投じる。甲府制圧の際に乾姓から板垣姓に変えたとい…

青柳碧人『むかしむかしあるところに、死体がありました。』(双葉社)

せんせいありがとう~!この週末は,撮りためた「アリバイ崩し承ります」でも見て過ごすかなぁ。 ---さて。 こんな時になんて本を紹介するのだと言われそうだが,でも実際に先週読んだ本なので仕方がない。青柳碧人『むかしむかしあるところに、死体がありま…

キャリー・マリス『マリス博士の奇想天外な人生』(ハヤカワノンフィクション文庫)

大先生、北の大地は「緊急事態宣言」 だそうですね。どうかくれぐれもご自愛ください。 新型コロナウィルス感染症のことで、すっかり「PCR検査」という用語を機会が多くなった。どこかで聞いたことがあったな、と思ったら、『生物と無生物のあいだ』に出てき…