平常運転平常運転と思いつつ、けっこう気は張り詰めているようで、からっきし読んだ本が頭に入ってこない。ゆる系の小説はまったく体が受け付けず、世界恐慌関連の本も読んだけど、何だかいつもと読後感が違う。
そんな中本書は、自身が病気になった医師18人の半生記である。ガン、脳出血、B型肝炎、ALS、パーキンソン病、白血病、性同一性障害、アルコール依存症など、かかった病気も多様で、発症した年齢もまちまちである。
とくに共通点を取り出そうというものでもない。ひとりの青年が医師をめざして医大に入る。青年医師として活躍し、順調にキャリアを重ねたところへ病気になる。そこで何を思い、その状況を受け入れ、ふたたび歩き出したのか。市井の医師たちの決断は、それぞれにすっと胸に染みこむものがあった。
それはそうと、ここに登場する18人の「名医」のうちで、親兄弟が医者で配偶者も医者であるという人の、多いこと。それに若い頃はみな馬車馬のように働いていたのだけれど、そうした働き方を最初からそんなものだとして、そして家族もそういうものだと思っているというのは、教師についても言えることかもしれない。
(こ)