ヴォルテール『哲学書簡』(斉藤悦則訳,光文社古典新訳文庫)

今年の本屋大賞,発表会自体は開催せず,インターネット上で配信するとのこと。状況が状況だけに仕方がないが,でも残念。
今年はノミネート10作品中,6作品を読了したが,イチオシはやっぱり,ノミネート前からずっと推している『線は,僕を描く』である。もっとも今年も混戦になりそうだが・・。

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さて。

サン=テグジュペリを読んで,もう少しフランスの文学とか思想とかに触れたいと思い,ヴォルテールを読んでみた。とりあえず,『哲学書簡』から。

1734年,ヴォルテール40歳の時の著作である。タイトルに反し,その内容は平易で,まるで雑誌のコラムでも読んでいるよう。でも中身はしっかり「思想」している。フランスの読者に対し,イギリスにおける信教の自由というものを説き,ロックの思考を紹介する。また,パスカル批判を通じて,人間の理性を信奉する。

本書は出版後ただちに発禁処分を受け,裁判所の前で燃やされた。にもかかわらず,逆にこのことによって評価が高まり,ベストセラーとなったという。市民はなかなかに,したたかである。

哲学書簡 (光文社古典新訳文庫)

哲学書簡 (光文社古典新訳文庫)


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