凪良ゆう『流浪の月』(東京創元社)

今年度の本屋大賞が4月初旬に発表された。大賞は,凪良ゆう『流浪の月』。

実はこの本,かなり前に購入していた。ただ,読み始めたところあまりにも暗くて重い展開だったため,最初の方で挫折してしまっていた。

今回,大賞を取ったということで,改めて初めから読み直した。

・・・やはり暗くて重い。

それが,ある程度読み進めていくうちに,いつのまにか小説の中の世界にはまっていた。

「少女誘拐事件」の「被害者」となった女性の,その後の物語である。規範ってなんだろう。世間ってなんだろう。人の善意とか悪意とかっていうものは,どこから出てくるんだろう。・・そんなことを思いながら読み進めていくうち,気付いたら最後まで読み終えていた。

社会がこういう状況の下で,この本を読むことができたというのは,何かの巡り合わせなのかもしれない。

今もこの現実世界のどこかで,主人公たちが生きているような気がする。がんばれ。そうとしか言いようがないけれど,がんばれ。

【2020年本屋大賞 大賞受賞作】流浪の月

【2020年本屋大賞 大賞受賞作】流浪の月


(ひ)