先週発表された本屋大賞ノミネート作は,以下の10作品です。
・砥上裕將『線は、僕を描く』(講談社)
・早見和真『店長がバカすぎて』(角川春樹事務所)
・川上未映子『夏物語』(文藝春秋)
・川越宗一『熱源』(文藝春秋)
・横山秀夫『ノースライト』(新潮社)
・青柳碧人『むかしむかしあるところに、死体がありました。』(双葉社)
・知念実希人『ムゲンのi』(双葉社)
・相沢沙呼『medium霊媒探偵城塚翡翠』(講談社)
・小川糸『ライオンのおやつ』(ポプラ社)
・凪良ゆう『流浪の月』(東京創元社)
エンタメ,ミステリ,純文学・・・。ありとあらゆるジャンルの本が幅広くノミネートされました。今年は,例年稀に見る激戦かもなぁ。
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さて。
本屋大賞にノミネートされたら読んでみようと思っていたら,ノミネートされた。なので読んでみた。小川糸『ライオンのおやつ』。
33歳の女性・海野雫は,余命わずかと告げられ,残りの日々を瀬戸内の島にあるホスピスで過ごすことにした。そのホスピスでは,毎週日曜日,入居者がもう一度食べたい思い出のおやつをリクエストする「おやつの時間」があった・・・。
本作品は,死にゆく若い人の人生を,そしてその心情を,小説という形式をとりながらもリアリティをもって描き出す。もちろん小説である以上,虚構であり,フィクションである。それでもこの本は,普段は意識していない「死」というもの,そしてそれと密接不可分な「生」というものを,主人公の目を通して読者に再認識させていく。
小説を読むという行為,特に,すぐれた小説を読むという行為は,他人の人生を疑似体験するに等しい。この本は,このを改めて思い起こさせるものであった。
(ひ)