小梅けいと『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ原作/KADOKAWA)

話題の漫画ということで読んでみた。小梅けいと『戦争は女の顔をしていない』。
 
原著は,スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチによるドキュメンタリー書籍である。ソ連では,第二次世界大戦に100万人を超える女性が従軍し,しかも戦後は世間から白い目で見られ続けたという。その元従軍女性ら500人以上から聞き取りを行ったのが,原著である「戦争は女の顔をしていない」。
 
これが,何と,日本でコミカライズされた。
 
本書に登場する女性は,実に様々である。従軍洗濯隊の政治部長代理を務めていた女性から始まり,軍医,狙撃兵,衛生指導員,高射砲兵,通信兵,斥候,一等飛行士・・・。一人ひとりの目線から,従軍の状況が語られる。
 
本書は多数の人々の従軍記であり,同時に,女性の社会進出の書でもある。軍の大多数を占めるのは男性であり,それゆえ女性たちは様々な場面で女性であるがゆえの苦労をする。しかも目の前で繰り広げられているのは,戦争である。このような極限状態にあった女性たちの「語り」を,本書は特段の主観を交えることなく,ただただ書き連ねていく。
 
絵柄には賛否両論あるだろうが(実際はもっと凄惨だったのでは,等々),今の日本において大手出版社からこのような作品が出版されること自体,英断である。
 
戦争は女の顔をしていない 1

戦争は女の顔をしていない 1

(ひ)