サン=テグジュペリ『戦う操縦士』(鈴木雅生訳,光文社古典新訳文庫)

ふらりと入った書店でたまたま目にとまった。今の気分に寄り添ってくれるような気がしたので読んでみることに。サン=テグジュペリ『戦う操縦士』。
 
1940年5月。ドイツ軍の侵攻の前に敗走を重ねるフランス軍。操縦士である「私」は,戦略的に無意味で,かつ危険な偵察飛行を命じられる。「私」は2名の乗組員とともに基地を飛び立つが・・・。
 
著者の実体験に基づく小説である。実際に行われた飛行任務をベースに,「私」の行動と思考とが入り交じる。小説の中で「私」は,様々な思い出に身をゆだね,思索にふける。人は何のために生き,何のために死ぬのか・・・サン=テグジュペリの思想が凝縮された作品である。
 
『夜間飛行』と『人間の大地』はとても好きな作品で,僕の人格形成に多少なりとも影響を与えてきたと思う。本作品もまた,よい小説だった。
 
(ひ)