データスタジアム株式会社 『野球×統計は最強のバッテリーである   セイバーメトリクスとトラッキングの世界 』(中公新書ラクレ)

 今はきっと世界史上の転換点なのだろう。20世紀的な世界秩序の断末魔の声なのか。

 

 こんど「スポーツデータ解析コンペティション」というのに生徒が参加することになって、自分も一緒になって統計の勉強を始めることにした(休校期間だし)。

 セイバーメトリックスとは、SABR(アメリカ野球学会)を中心に展開される「野球についての客観的見地からの調査研究」のことで、映画「マネーボール」で広く知られるところとなった。野球に限らず多くのスポーツにおいて、優秀なデータアナリストの存在は勝利にとって今や欠かせなくなっている。

 本書の前半では「OBP(出塁率)」「OPS」「ISO」などのセイバーメトリックスの中心的な指標について説明され、後半では実際の例を示しながらセイバーメトリックスによって何がわかるのかが対談形式で解説される。

 なるほど、純粋な科学の研究と違って、チームの勝利への確率を高めることを目的として、そのために有効なモデルや指標を作成してそのあてはまりを統計学の方法を使って確認することが、セイバーメトリックスというものか。
 生き馬の目を抜く株式市場において利益を上げるために、株価の動きを説明するためのさまざまな指標が開発され、運用されてきた歴史と重なる。
 相関が見つかればよく、因果関係という科学的思考はそこにはあまり必要ない。

 とすると、セイバーメトリックスに限らずスポーツデータ解析とは、少しでもチームの勝利に貢献する何らかの実践的な手がかりをビッグデータの中から掘り起こす作業であり、いわゆる「課題研究」とは似て非なるものになるわけだな・・・。

 (こ)