2023-01-01から1年間の記事一覧

梅村達『派遣添乗員ヘトヘト日記』(三五館シンシャ)

毎年修学旅行に添乗してもらっているベテラン添乗員さんがいて、超優秀なのだが、K○Tの社員さんではないということを聞いて(というか○NTの社員さんのミスを現場で次々とフォローしていくので、困ったらみんなその添乗員さんに相談に行く)、へ~そんな仕…

岩井俊二『キリエのうた』(文春文庫)

岩井俊二監督といえば『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』や『Love Letter』なのだろうけれど、僕の中では『スワロウテイル』が印象深い。今のようなネットのない時代、雑誌で読んだ断片的な情報だけで映画館に赴き、冒頭から「なんだこれは…」…

姫野和樹『姫野ノート』(飛鳥新社)、栗山英樹『栗山ノート2 世界一への軌跡』(光文社)、大谷翔平『不可能を可能にする 大谷翔平120の思考』(ぴあ)

うちのチビがインフルエンザにかかって、1週間家に閉じこもっていました。 熱が下がるとやることなくて朝から晩までタブレットで動画見ているので、これでも読みな、と買ってきたのがこのあたり。 ラグビー日本代表の姫野キャプテンと、WBC日本代表の栗山監…

佐藤雄基『御成敗式目』(中公新書)

鎌倉市の常楽寺というところに北条泰時のお墓がある。一度訪れたことがあったが、観光地化されることもなく、ひっそりとしたたたずまいのお墓であった。 さて、その北条泰時が制定した「御成敗式目」。以前から気にはなっていたのだが、この度一般向けの解説…

香川めい・児玉英靖・相澤真一『<高卒当然社会>の戦後史』(新曜社)

先日、某教育系雑誌の編集委員さんからメールが届き、少子化時代の高校改革や私立高校授業料無償化政策のことで特集記事を出すから、戦後の高校教育拡大に焦点を当てて原稿を書いて欲しい、という依頼がありまして、勉強だと思ってお引き受けしました。 それ…

夕木春央『十戒』(講談社)

山奥にある謎の地下建築を舞台にしたミステリ『方舟』。最近でも昼の情報番組で取り上げられるなど、根強い人気がある。 その作者、夕木春央が新刊を出したので読んでみた。『十戒』。 絶海の孤島・枝内島。この島に渡った9人のうち、1人が殺害された。犯…

高野秀行『イラク水滸伝』(文藝春秋)

すごい本だった。 まず、イラクに巨大な湿地帯があって、そこに水の民が暮らしているなんて知らなかった。本書はアフワールと呼ばれる地(チグリス川とユーフラテス川の下流域)に飛び込み暮らした、初の日本人による記録である。 彼の地は、粘土と葦が生ん…

山田康弘『足利将軍たちの戦国乱世』(中公新書)

ゆうきまさみ『新九郎、奔る!』でも描かれている室町時代中期。応仁の乱の後の関東情勢については、以前紹介した峰岸純夫『享徳の乱』でよく分かったが、京都周辺の情勢はなおよく分からないままだった。・・・そもそも足利将軍家って、乱の後はどうなった…

螺旋プロジェクト

原始:「ウナノハテノガタ」 (大森兄弟)古代:「月人壮士」 (澤田瞳子) 中世・近世:「もののふの国」 (天野純希)明治:「蒼色の大地」 (薬丸岳) 昭和前期:「コイコワレ」 (乾ルカ)昭和後期:「シーソーモンスター」 (伊坂幸太郎) 平成:「死に…

市川沙央『ハンチバック』(文藝春秋)

話題作というので読んでみた。市川沙央『ハンチバック』。 第128回文學界新人賞の受賞作にして、今般の芥川賞受賞作である。 ・・・まあ、これは文句なしの受賞作ですね。 端的にまとめてしまえば「重度障害者の生と性」、などということになるのだろうが…

乾ルカ『コイコワレ』(中公文庫)

このブログを始めるきっかけとなった(というか始めるよう依頼してきた)読者第1号のK氏が、海外赴任してしまったので、電子書籍で読めるものを中心に扱った方がいいのか、と思いつつ、まぁいいのかな。 「螺旋プロジェクト」、7月に中断してしまい、そこ…

アリストテレス『政治学』(下)(三浦洋訳・光文社古典新訳文庫)

アリストテレス『政治学』の下巻に突入。『政治学』全8巻のうち、残る第5巻から第8巻までを収録している。 第5巻は、国制(政治体制)の変動について。政治体制というのは固定されたものではなく、むしろ様々な要因によって変動し得るものという指摘が鋭…

岡田憲司『教室を生きのびる政治学』(晶文社)

アリストテレスの『政治学』は学生時代に岩波文庫版を読みましたが、当時はとりあえず眺めてみたって感じでした。今読んだらどうなんだろう。またいつかチャレンジしてみます。 というわけで、その政治学をどう現実の主権者教育にむずびつけていくかは、新制…

アリストテレス『政治学』(上)(三浦洋訳・光文社古典新訳文庫)

この夏の自分用課題図書。アリストテレス『政治学』。 実は昔、中公クラシックス版の抄訳を読んだことがあったが、想像していた以上に難解で「思ってたんとちがう!」状態であった。一応最後まで読み切ったものの(今でも手元に置いている。)、できればいつ…

E.H.カー(清水幾太郎訳)『歴史とは何か』(岩波新書)

去年『歴史とは何か』の新訳が出た。どうしようかとアマゾンのカートにとりあえず入れた。さっそくついたレビューを読んでいると、旧訳(清水訳)は軽妙な名訳であると言われ、新訳(近藤訳)は資料として上級者が読んだりあるいはカーを批判的に読むにはこ…

青木敬『古墳図鑑』(日本文芸社)

考えてみたらこれも本だ。青木敬『古墳図鑑』。 全国各地の300基以上もの古墳をまとめた図鑑である。図鑑といってもそう大きくなく、携帯に便利なハンディサイズである。 原則として1頁につき古墳1基を紹介。写真も豊富。古墳そのものの説明に加え、墳…

辻田真佐憲『「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史』(講談社現代新書)

大先生、今回も直木賞的中、さすがです! 今年の祇園祭ももうすぐ幕を閉じるのだが、例年祭りの後になると「近代国家日本」について考えてしまう。江戸時代、あるいは室町時代から脈々と続くしきたりや懸装品を前にすれば、近代日本もひとつの時代として相対…

真夏のコミック6選+1

当ブログで紹介した垣根涼介『極楽征夷大将軍』(文藝春秋)と永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』(新潮社)がダブルで直木賞受賞! おぉ!! --- 眞藤雅興『ルリドラゴン』(ジャンプコミックス) 高校生の青木ルリ。ある朝、いきなり頭にツノが生えていて――。…

李宣英『準市場の成立は高齢者ケアサービスを変えられるか 日韓の比較実証分析』ミネルヴァ書房

先週末は祇園祭前祭の宵山、今週末は後祭の宵山です。24日の後祭巡行と還幸祭で、祭の方はクライマックスを迎えます。 というわけで、先週今週は空き時間をそっちの方に全振りをしてしまったので、今週もまた仕事関係の本で失礼いたします。(いったん止ま…

井原西鶴『好色一代男』(中嶋隆訳・光文社古典新訳文庫)

江戸時代までの文学と明治時代以降の文学との間には断絶があるのではないか。そう思わざるを得ないほど、現代の感覚からするとぶっ飛んだ内容であった。井原西鶴『好色一代男』。 色男・世之介の生涯を描いた小説である。 全54章からなるこの小説。作品中…

カティ・マートン『メルケル 世界一の宰相』(文藝春秋)

生まれて間もないアンゲラは、厳格なルター派の牧師である父とともに、ハンブルクから東ドイツへ向かっていた。非凡な才能を持つアンゲラであったが、聖職者の娘として、秘密警察国家で生き残る術を幼いながらに身につけていく。学生時代の最初の結婚と離婚…

岡田麿里『アリスとテレスのまぼろし工場』(角川文庫)

岡田麿里が初めて監督を務めた映画「さよならの朝に約束の花をかざろう」からはや5年。今年9月には監督2作目となる映画「アリスとテレスのまぼろし工場」の公開を控えている。その小説版(監督自ら執筆)が発表されたので、読んでみた。岡田麿里『アリス…

「カトリック教会情報ハンドブック2023」(カトリック中央協議会)

思っていた以上にコロナはしんどくて、熱が出ていたときにはスマホ見るのもしんどくて、考え事するのもめんどうだった。熱が下がってもしばらくは頭痛が残って活字どころではなく、ただゴロゴロして過ごした。 発症5日目にしてようやく少し楽になってきて、…

広末涼子『ヒロスエの思考地図 しあわせのかたち』(宝島社)

せんせい、お大事にっ!! --- 広末涼子のエッセイ本である。 ライターさんが本人の話を文章化しているだけのエッセイ本も少なくない中、本作は、広末涼子が本当に原稿を書いている(しかも手書きで)というのがウリである(これすら嘘というのであれば、も…

垣根涼介『極楽征夷大将軍』(文藝春秋)

「螺旋」プロジェクトが勢揃いしている・・・壮観!! --- 直木賞レースの大本命である。垣根涼介『極楽征夷大将軍』。 『光秀の定理』では明智光秀を描き、『信長の原理』では織田信長を描いた著者。今回、全552頁・上下2段組みの超大作で描くのは、足…

「螺旋」プロジェクト

今週は、「螺旋」プロジェクトに挑戦中。未完。 大先生が紹介された作品もあります。 とにかく一気に全部読み切りたいと思っておりまして、ちょっと待ってくださいね。 (こ)

永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』(新潮社)

時代小説は滅多に読まないのだけれど、話題作だというので読んでみた。永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』。 時は江戸時代。芝居小屋のある木挽町で一つの仇討ちがあった――。 仇討ちを目撃した者らが、その顛末とともに、併せて自らの半生を語っていくという形…

小野田正利編著『イチャモン研究会 学校と保護者のいい関係づくりへ』(ミネルヴァ書房)

早いものですね。もう次の芥川賞直木賞の季節ですか。=== 失敗研究という分野があって、不幸にして大事故が起きるたびに見直されては、また消えていく。成功の秘訣を語る方が華やかだし世間の耳目を集めるから仕方ないのかもしれないけれど。 15年ほど前…

ジッド『ソヴィエト旅行記』(國分俊宏訳・光文社古典新訳文庫)

人生・全肯定のジッドもよいが、やはり怒れるジッドも見てみたい。そこで読んでみたのがこちら。ジッド『ソヴィエト旅行記』。 1936年の6月から8月にかけて、ジッドはスターリン体制下のソヴィエト連邦を訪問する。期待に胸を膨らませていたジッドが見…

徳仁親王『テムズとともに 英国の二年間』(紀伊國屋書店)

本書は徳仁親王の1983年から85年の英国オックスフォード滞在記が1992年にまとめられ、学習院創立150年を記念し、学習院長の提案などによってこのたび復刊の運びとなったものだそうである。 内容がどう、というよりも、今上天皇の生の声を200ページにわたって…