ジッド『ソヴィエト旅行記』(國分俊宏訳・光文社古典新訳文庫)

人生・全肯定のジッドもよいが、やはり怒れるジッドも見てみたい。そこで読んでみたのがこちら。ジッド『ソヴィエト旅行記』。

1936年の6月から8月にかけて、ジッドはスターリン体制下のソヴィエト連邦を訪問する。期待に胸を膨らませていたジッドが見たものは、ディストピアのような管理国家であった。大いに失望したジッドは、帰国後『ソヴィエト旅行記』を刊行し、翌年には批判に答える形で『ソヴィエト旅行記修正』を刊行する。

現在ではソ連がどういう国家であったのかもよく知られているが、当時は「理想国家」と考える人も少なくなかった。かの国の暗部を描いた本書は大きな議論を呼び、ジッドは様々な批判にさらされる。

それにしても、前に取り上げたカミュもそうだけど、世界的に知られた文学者が政治的な書物を刊行して議論を巻き起こすというのは、今ではちょっと考えられない。これも時代であろう。

ジッド『ソヴィエト旅行記』(國分俊宏訳・光文社古典新訳文庫


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