徳仁親王『テムズとともに 英国の二年間』(紀伊國屋書店)

 本書は徳仁親王の1983年から85年の英国オックスフォード滞在記が1992年にまとめられ、学習院創立150年を記念し、学習院長の提案などによってこのたび復刊の運びとなったものだそうである。
 内容がどう、というよりも、今上天皇の生の声を200ページにわたって浴びることができる、貴重な機会であった。抑制の効いた文体で、じわじわとくる。このような知性と感性の持ち主を菊のカーテンの向こうに押し込めておくのではなく、もっと国民の前に出てきて言葉をかけていただけたらいいと思うし、世界に出て行って交流を深めてきてもらえたらいいと思うし、きっとご本人もそれをよしとするんじゃないのかな。
 なお本書は、この留学をかなえてくれた「両親」に捧げられている。家族の絆である。

(こ)