アメリカ独立の導火線となった檄文が，新訳で登場。トマス・ペイン『コモン・センス』。
１７７６年１月発行の小冊子で，アメリカ独立の正当性と必要性を唱えたものである。発行直後から爆発的に売れ，これをきっかけにイギリス王政への批判とアメリカ独立が公然と論じられるようになった。現代のアメリカの小学校教科書には，トマス・ペインの名が必ず登場するという。
内容は全４章と付記からなる。第１章と第２章では，イギリスの王政に対する批判，さらには王政や世襲制そのものに対する批判が論じられている。ペインはいう。「ひとりの人間を他の人間のはるか上に立たせることは，各人に平等に与えられた自然権にもとづくなら，およそ正当化できない。」（３３頁）。
そして，第３章ではイギリスとアメリカの関係を考察し，第４章ではイギリスからの独立の必要性を高らかに唱える。
巻末の解説でも触れられているが，『コモン・センス』の特徴は，物事を判断するにおいては現在の利益・不利益だけでなく，将来の子孫の利益・不利益をも考慮すべきだと繰り返し説くところにある。
「私たちはおのれの義務の筋道を正しく知るために，自分たちの子孫に対する責任を引き受け，観測点を何年も先に設定して世の中をのぞくべきである。」（６４頁）。
今なお色あせることのないメッセージである。
（ひ）
