小野田正利編著『イチャモン研究会 学校と保護者のいい関係づくりへ』(ミネルヴァ書房)

早いものですね。もう次の芥川賞直木賞の季節ですか。
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失敗研究という分野があって、不幸にして大事故が起きるたびに見直されては、また消えていく。成功の秘訣を語る方が華やかだし世間の耳目を集めるから仕方ないのかもしれないけれど。

15年ほど前、教育の世界で一世を風靡した研究があった。保護者からのクレームに対抗するのではなく、保護者からのSOSとして受け止め、しっかりと保護者とつながろう、というものである。その中心となったのが大阪大学の小野田研究室で、たくさんの本も出た。

 

さて問題なのは、この研究成果がどのようにして学校現場に反映され、どのように学校現場を変えたのだろう、ということである。

理不尽な保護者からのクレームは、15年経った今でも延々となくなることはなく、むしろ学校が一方的に「寄り添おう」としてきた結果、今、何が起きているか。

 

本書の内容は、今読んでもまったく古さを感じない。奥付を見て2009年発行ということに驚く。

今であれば、彼らは現状をどう分析するだろう。

教育政策においても必要なのは「失敗研究」である。うまくいった事例ばかり広めている場合ではないし、学校改革を成功させたといわれる校長を持ち上げている場合でもない。

(こ)