北川直利『ミッション・スクールとは何か』(岩田書院)

 今日は、個人的な読書メモ。

 今、日本中のカトリック学校が、危機に瀕している。聖職者の高齢化、修道院の撤退、生徒減少・・・。そうした中で「カトリック教育」についての論考は数あるし、都市のキリスト教系ミッションスクールについては、立身出世主義あるいは良妻賢母主義との親和性、あるいは西洋文明の受容といった視点からの先行研究はあれど、「カトリック学校」についての考察はきわめて少ない。

 そうした中で、本書は秋田の私学の先生が紀要に書き連ねた研究成果をまとめたものである。宗教社会学からのアプローチによってカトリック系ミッションスクールの位置づけを考察し、36校の教職員アンケートを中心に、カトリック系ミッションスクールと他の宗教系私学(プロテスタント系、仏教系など)との違いを浮かび上がらせたり、カトリック学校内の類型化が試みられている。アンケートの取り扱いについてはやはりきちんとした方法論が必要だったとは思うし、体裁としても学術論文として見るには甘いところが散見されるものの、本書は「カトリック学校」について社会学的アプローチによって体系的に論じた、おそらく唯一の書籍である。

 本書が刊行されたのは2000年。700部発行されたうちの1冊が手元に、1冊が本校図書館にある。

(こ)