時代小説は滅多に読まないのだけれど、話題作だというので読んでみた。永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』。
時は江戸時代。芝居小屋のある木挽町で一つの仇討ちがあった――。
仇討ちを目撃した者らが、その顛末とともに、併せて自らの半生を語っていくという形式の物語である。一人一人の語り口はそれぞれ個性が出ており、キャラ立ちは十分。そして語りの奥にあるのは、苦労に苦労を重ねた人が見せるやさしさである。
ミステリ要素もあるものの、この作品の本質はやはり「人情」にあるのだろう。最後まで一気に読み進んだ。
・・・などと思っていたら、6月16日に発表された直木賞候補作の中に本作も入っていた。ちなみに全候補作は以下のとおり。
・冲方丁『骨灰』(KADOKAWA)
・垣根涼介『極楽征夷大将軍』(文藝春秋)
・高野和明『踏切の幽霊』(文藝春秋)
・月村了衛『香港警察東京分室』(小学館)
・永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』(新潮社)
今回も濃いなぁ。
(ひ)