真夏のコミック6選+1

当ブログで紹介した垣根涼介『極楽征夷大将軍』(文藝春秋)と永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』(新潮社)がダブルで直木賞受賞! おぉ!!

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眞藤雅興『ルリドラゴン』(ジャンプコミックス

高校生の青木ルリ。ある朝、いきなり頭にツノが生えていて――。

バトル物の多い印象の週刊少年ジャンプの中では異色の作品である。ツノの生えた少女の存在は、さながら集団の中に突如現れたマイノリティである。ありのまま受け入れる生徒、困惑する生徒。本作は様々な高校生の心の微妙な揺れをうまく描き出している。

シンプルながらしっかりとした絵柄の本作で、この後の展開もすごく気になっていたのだけれど、残念ながら作者が長期療養に入られてしまった。無理のない範囲でかまわないので、またいつか続きが読みたい。

眞藤雅興『ルリドラゴン』(ジャンプコミックス

 

浅見理都『クジャクのダンス、誰が見た?』(Kissコミックス)

クリスマスの夜に起きた放火殺人事件。男が検挙され、これで一件落着かと思われたが、被害者が生前に遺していた手紙には――。

当ブログでも紹介した『イチケイのカラス』の著者・浅見理都。その新作は、冒頭から読者を惹きつけるクライム・サスペンスである。少しずつ明らかになっていく事実関係と、そして謎。マンガという形式で、これだけ重みのあるストーリーが読めるのはなかなかない。

現在、第2巻まで刊行中。読み始めるなら、今!

浅見理都『クジャクのダンス、誰が見た?』(Kissコミックス)

 

D・キッサン『神作家・紫式部のありえない日々』(ZERO-SUMコミックス)

34歳・シングルマザー。趣味は同人活動――。

紫式部を主人公にした作品であるが、キャラクターの造形は現代人そのものである。これまで「才女」として描かれることの多かった紫式部を、等身大のアラサー女性として描き出すというのが真新しい。基本的にはコメディなのだけれど、意外にも史実をきっちり踏まえている。

複雑な人物関係も、分かりやすく頭に入ってくる。来年の大河ドラマの予習にも、ぜひ。

D・キッサン『神作家・紫式部のありえない日々』(ZERO-SUMコミックス)

 

タイザン5『一ノ瀬家の大罪』(ジャンプコミックス

『タコピーの原罪』が大ヒットしたタイザン5。週刊少年ジャンプへの初連載は、なんと、記憶喪失になった家族の物語――!?

物語がどこへ進むか分からない。これは、ホラーか、それともサスペンスか。

第1巻も読み応えがあったが、今から振り返るとまだまだ序盤にすぎなかった。第2巻で展開されるストーリーで、読者はこの物語の枠組みを知らされる。思わず第1巻から読み直すと・・・おぉ!

週刊連載とは思えない、濃い作品である。

タイザン5『一ノ瀬家の大罪』(ジャンプコミックス

 

〔原作〕相沢沙呼・〔漫画〕清原紘『medium 霊媒探偵城塚翡翠』(アフタヌーンKC)

前にも紹介した『medium 霊媒探偵城塚翡翠』のコミカライズ版である。原作の持つ雰囲気をうまく表現している。頭の中で想像するしかなかった登場人物や事件現場の様子が、このように視覚化されるというのは貴重。

・・・しかし、第1巻の表紙!! これはちょっと買いづらい・・・!!

第2巻の表紙は落ち着いたものになりますように(笑)。

〔原作〕相沢沙呼・〔漫画〕清原紘『medium 霊媒探偵城塚翡翠』(アフタヌーンKC)

 

うすくらふみ『すこしだけ生き返る』(ビッグコミックス

間敏郎・42歳。職業・弁護士。最近、肩の痛みや目のかすみ、腰痛などに悩まされて――。

本作は、体のわずかな衰えを感じ始めた主人公が、そのメンテナンスにいそしむ作品である。取り上げているのは主として「ストレッチ」。あ、これならできるかも・・・というお手軽感が良い。

弁護士を主人公にした作品はそうめずらしくもないが、本作の主人公は、どこにでもいそうなおじさん。ミステリアスな事件の解決も悲喜劇こもごもの人間ドラマもなく、ただただ体をいたわってほぐす姿を描き出す。

読んでいるだけでも、すこしだけ、生き返る感じがする。

うすくらふみ『すこしだけ生き返る』(ビッグコミックス

 

〔原作〕恩田陸・〔作画〕皇なつき蜜蜂と遠雷』(幻冬舎コミックス

最後にもう1作。本ブログで最初の「コミック○選」で紹介した『蜜蜂と遠雷』に、なんと待望の第2巻が出た! 第1巻の発売が2019年9月なので、実に約4年ぶりの続刊である。・・・連載、辞めてなかったんだなぁ。

第1巻はまだ序章にすぎなかったが、この第2巻でついに第1次予選開幕。音楽をマンガで表現するという困難な仕事に真っ向から立ち向かった本作。想像以上の出来でした。・・これだこれ、こういう作品が読みたかった!

〔原作〕恩田陸・〔作画〕皇なつき蜜蜂と遠雷』(幻冬舎コミックス


(ひ)