相沢沙呼『invert II 覗き窓の死角』(講談社)

反転、再び――。

相沢沙呼『invert II 覗き窓の死角』

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』、『invert 城塚翡翠倒叙集』に続く、シリーズ3作目である。相沢沙呼『invert II 覗き窓の死角』。今回は、「生者の言伝」と「覗き窓の死角」中編2作を収録。

「生者の言伝」は、ややコミカルな展開。タイトルは「古畑任三郎」の第1話「死者からの伝言」を想起させるが、内容はむしろ第2シーズンのとある話を思い起こさせる。とはいえ本作はいろいろヒントがあるなぁと思いながら読み進めていたところ・・・

びっくりしたぁ! 読んでいる僕も驚いた。

続いて「覗き窓の死角」。こちらは力の入ったやや長めの作品である。だまされる快感、とでも言おうか。ヒントは幾重にもちりばめられていた。極めてフェアなミステリに脱帽する。

主人公の城塚翡翠のキャラ付けは、本作でがっしり固まったとうべきであろう。これまでありそうでなかった探偵キャラである。頭脳明晰でありながら天然ボケ。犯人を追い詰めていくロジカルなトーク。強いんだか弱いんだか分からないメンタル。秘書というか保護者の千和崎真(ちわさき・まこと)とのタッグも楽しい。

今回も表紙は遠田志帆さん。本作のワンシーンを切り取ったかのような印象的な絵は、いつまでも眺めていたくなる。

ところでシリーズ1冊目の『medium 霊媒探偵城塚翡翠』だが、今月からテレビドラマが放映されるとともに、なんと「アフタヌーン」誌でコミカライズされることに。漫画担当は「十角館の殺人」も担当した清原紘さん。『小説現代』10月号で先行公開されると聞いて、早速読んでみたがすごく良かった。同号では「城塚翡翠」特集が組まれ、相沢沙呼さんの対談もあったりして(表紙はドラマ版の主演・清原果耶さん)、結構お買い得であった。

小説現代』10月号


(ひ)