アリストテレス『政治学』(下)(三浦洋訳・光文社古典新訳文庫)

アリストテレス政治学』の下巻に突入。『政治学』全8巻のうち、残る第5巻から第8巻までを収録している。

第5巻は、国制(政治体制)の変動について。政治体制というのは固定されたものではなく、むしろ様々な要因によって変動し得るものという指摘が鋭い。

どの記述も示唆に富むが、特に、独裁制については「悪を持つことは明らか」(108頁)とした上で、独裁者が独裁制を存続させる方法として、(1)被支配者が互いに信頼し合わないようにすること、(2)被支配者が行動するための能力を持たないようにすること、(3)被支配者が小さなことばかり意識するように仕向けること、という3点を挙げている(136頁)。現代にも通じる、興味深い指摘である。

続く第6巻は、民主制と寡頭制の課題について。「平等と正義を求めるのは、常に弱者なのであって、力で優る者たちは全く顧慮しない」(175頁)、「節制を保って生きるより、無秩序に生きる方が、多くの人々にとって快い」(185頁)などの辛辣な名言が続く。

第7巻と第8巻は、これまでとはやや異なり、理想的な最善の国制を研究しようとするものである。特に、第7巻の途中から繰り広げられる教育論が目を引く(この部分、実は中公クラシックス版の抄訳では訳されていなかった。)。

とにかく、これでアリストテレスの『政治学』を読破。しかし、長かったぁ~。

アリストテレス政治学』(下)(三浦洋訳・光文社古典新訳文庫


(ひ)