アリストテレス『政治学』(上)(三浦洋訳・光文社古典新訳文庫)

この夏の自分用課題図書。アリストテレス政治学』。

実は昔、中公クラシックス版の抄訳を読んだことがあったが、想像していた以上に難解で「思ってたんとちがう!」状態であった。一応最後まで読み切ったものの(今でも手元に置いている。)、できればいつか再チャレンジしたいと思っていた。

アリストテレス政治学』(田中美知太郎ほか訳・中公クラシックス

そうしたところ、今回、光文社古典新訳文庫から新訳(全訳)が出たので再チャレンジ。まずは上巻から。『政治学』全8巻のうち、第1巻から第4巻までを収録している。

巻末解説に「できるだけ現代の日常語に近い訳語を選んだ」(525頁)ともあるように、文章としてはかなり読みやすくなっている。これは大変ありがたい。例の名言は「人間は自然本性的に国家を形成する動物である」と訳している(32頁)。

第3巻第7章では国制(政治体制)を、単独者による支配である「王制」、少数者による支配である「貴族制」、多数者による支配である「共和制」に分類。それぞれ逸脱(腐敗)すると、王制は「独裁制」に、貴族制は「寡頭制」に、共和制は「民主制(衆愚制)」に陥る(294頁以下)。教科書にも出てくる、アリストテレスの政治思想の根幹をなす分類である。

第4巻第14章では、国制を「審議を担う部分」、「公職を担う部分」、「裁判を担う部分」に分けて論じている。近現代でいう立法・行政・司法に当たり、なかなか興味深い。

ところで今回読んでみて感じたのだが、アリストテレスは比喩がうまい。難しい概念を説明する際、分かりやすいたとえ話を用いて説明している。例えば、1人の最善の支配よりも多数者の判断に委ねる方が望ましいという話において、アリストテレスは「多数の人々がさまざまな食べ物を持ち寄った食事会の方が、単一の料理だけの食事会より優れている」と説明している(365頁)。要所要所での工夫が光る。

今回はひとまず上巻まで。すんなり読める本ではなく、一つ一つ咀嚼しながら読み込んでいったため、思ったよりも時間を要した。下巻はまた今度。

アリストテレス政治学』(上)(三浦洋訳・光文社古典新訳文庫


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