岡田憲司『教室を生きのびる政治学』(晶文社)

 アリストテレスの『政治学』は学生時代に岩波文庫版を読みましたが、当時はとりあえず眺めてみたって感じでした。今読んだらどうなんだろう。またいつかチャレンジしてみます。

 というわけで、その政治学をどう現実の主権者教育にむずびつけていくかは、新制高校が発足して75年経つが、いまだに解は見つかっていないように思う。高校の新必修科目「公共」もかたや主権者教育を謳いながら、一方で「教育の政治的中立」「不偏不党」を掲げての架空の政党をつかっての模擬投票で無難に終わらせるなんてことが実際には起きている。

 しかしほんとうは、政治的中立という態度もまた政治性を帯びているのだし、誰しも政治という社会的行為から自由であることはできない。政治をするのは政治家だけではないし、集団を維持するためのルール作りや権力行使もまた国家の統治行為に限ったものではない。そのあたりを学校の中で日常的に起きている現象を通して、政治学の基本概念を整理してゆくのが本書である。

 合意とは何か、権力とは何か、多数決と民主主義は同じことか、政治的中立という態度は政治的ではないのか、対立と連帯、平等・公平・公正、いずれも政治を分析し使いこなす上での最重要概念である。

 人間が2人集まれば経済が始まり、3人集まると政治が始まるという。自分自身がかつて政治学を専攻し、中学高校で教えられている「政治」とのギャップに大いに驚き、どうすれば中学高校の現場で「科学としての政治学」を教えられるか、試行錯誤してきた。いまだに答えは見つからないし、その効果もわからないのだが、とにかく9月からまたがんばってみようと思わせた一冊であった。

(こ)