吉野作造『憲政の本義、その有終の美』(山田博雄訳,光文社古典新訳文庫)

民本主義」を唱道した政治学者・吉野作造。その代表作である「憲政の本義を説いて其有終の美を済すの途を論ず」が,この度,現代語訳になった。題して『憲政の本義、その有終の美』(山田博雄訳)。
 
1916年(大正5年)の作品である。しかし,ここで説かれている本質的な内容は,今なお古さを感じさせない。例えば,憲法により政府の権力を制限し,しばりをかけるのが「立憲主義」であり,なぜ「立憲主義」が必要かといえば,それは政府の権力から国民(の基本的人権)を守るためである・・・と。他にも,吉野作造は,「言論思想の自由」の重要さを述べ,「責任内閣制」の必要性を述べ,「衆愚政治」批判を展開し,「憲法の精神」が大事であることを強調している。
 
「民主主義」ではなく「民本主義」という用語を用いた理由は,僕たちが中学・高校の歴史の授業で習ったとおりではある。しかし,そのような制約がありながらも,吉野作造は,繰り返し,デモクラシーの重要性を説く。
 
吉野作造は,1933年(昭和8年)に逝去した。もし彼が戦後の,そして現在の日本社会を見たら,どう思うだろうか。
 
憲政の本義、その有終の美 (光文社古典新訳文庫)

憲政の本義、その有終の美 (光文社古典新訳文庫)

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