乾ルカ『コイコワレ』(中公文庫)

 このブログを始めるきっかけとなった(というか始めるよう依頼してきた)読者第1号のK氏が、海外赴任してしまったので、電子書籍で読めるものを中心に扱った方がいいのか、と思いつつ、まぁいいのかな。

 

 「螺旋プロジェクト」、7月に中断してしまい、そこからなかなか戻るきっかけがつかめないまま、8月も半ばとなった。新幹線で移動する車中で1冊(明治=蒼色の大地)、そして続けてもう1冊(戦中=本作品)。その日が奇しくも8月15日のことだったので、書いておきたいと思う。

 

 部隊は東北地方のある山村。東京から疎開してきた清子と、お寺の娘・リツ。蒼い目の清子には父がなく、大きな耳のリツは捨て子であった。宿命によって無意識に忌み嫌いあうふたりの少女が、ある事件をきっかけに宿命に抗い始めることになる。そして清子が女学校受験のために東京に戻る1945年3月8日、首飾りがふたたび壊れたとき、運命が動く。

 すべて読破してから何かしら書こうと思うので、簡単に。
 この宿命の設定はどうしても、差別だとかいじめだとか、そういう環境から入ることになりがちらしく、今回もまたしんどいスタートだった。7回裏に必ずあるイベントが起きて物語が急展開を見せることはお約束なので、それを心待ちに前半を読み進める。後半は一転、ふたりの少女の距離が次第に縮まってゆく学園ものとなって、その描写は重苦しさを感じさせない。そして一気にクライマックスへ。

 疎開先が宮城県という設定なのも、次を受ける伊坂幸太郎氏へのお膳立てなのだろうか。というわけで、先を急ぐ。

 

 そして、子どもたちにこんな思いをさせないようにするのは、大人の責任だ。

(こ)