山田康弘『足利将軍たちの戦国乱世』(中公新書)

ゆうきまさみ『新九郎、奔る!』でも描かれている室町時代中期。応仁の乱の後の関東情勢については、以前紹介した峰岸純夫『享徳の乱』でよく分かったが、京都周辺の情勢はなおよく分からないままだった。・・・そもそも足利将軍家って、乱の後はどうなったの?

そんな時に、本書を見つけたので読んでみた。山田康弘『足利将軍たちの戦国乱世』。

9代義尚から15代義昭まで、それぞれの将軍の生涯及び事績をたどるとともに、「傀儡」「無力」という足利将軍のイメージが正しいのか、検討を加える本である。

戦国期の足利将軍というと、ただ京都にいるだけの「おかざり」という勝手な印象を抱いていたが、実際はかなり異なっていた。

例えば10代義稙(よしたね)。近江及び河内へと二度にわたる大規模な戦争を敢行して将軍としての武威を示し、その直後に幽閉されるも脱出して各地を駆け巡って、15年後に京都を奪還。しかし、たった一つの失策によって京都を追われ、最後は阿波で客死した。・・・なんだかドラマの主人公にでもなりそうな人生である。

本書のあちこちに、当時の一次資料がコラム的に紹介されていて、当時の空気感がよく伝わる。文章自体も読みやすく、良い本であった。

山田康弘『足利将軍たちの戦国乱世』(中公新書


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