鈴木由美『中先代の乱』(中公新書)

せんせいもちらっと書いていたけれど,週刊少年ジャンプで連載中の松井優征「逃げ上手の若君」が「中先代の乱」をテーマにしている。個人的にも興味を持ったのでより深く知ろうと探したところ,ちょうどよいタイミングで新書が出ていた。鈴木由美『中先代の乱』。

鎌倉幕府滅亡から2年後の1335年。北条高時の遺児・北条時行が挙兵した乱である。一時は鎌倉を陥落させたほどの勢いがあった。

本書はこの「中先代の乱」について,各種の史料・文献を丁寧に読み解き,その歴史的意義及び影響について考察を加えている。

北条時行が鎌倉を占領したのはわずか20日余り。とはいえこの乱により,建武政権は大きく動揺し,結果的に足利尊氏建武政権から離反するきっかけともなった。教科書での記載はわずか数行だが,しかしながらその意義は結構,大きい。

ところで本書の著者であるが,実は中学2年の時に読んだマンガがきっかけで,北条時行のことが好きになり,「卒業論文で時行のことを書くために」文学部史学科に進学したという(191頁)。この著者のような生き方,なかなか魅力的である。


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