佐藤雄基『御成敗式目』(中公新書)

鎌倉市常楽寺というところに北条泰時のお墓がある。一度訪れたことがあったが、観光地化されることもなく、ひっそりとしたたたずまいのお墓であった。

さて、その北条泰時が制定した「御成敗式目」。以前から気にはなっていたのだが、この度一般向けの解説書が出たため読んでみた。佐藤雄基『御成敗式目』。

画期的と評され、歴史の教科書にも出てくるこの法が、どのように生まれ、知れ渡ったのか。後世への影響も含め、幅広く論じた一冊である。

内容的には、やはり裁判制度についての解説が面白い。中でも「じっくりとやる裁判がよいのか、迅速な裁判のほうがよいのか、中世の人びとも、この2つの理想の間で迷っていた」(178頁)との指摘は現代にも通じるところがある。

他にも、御成敗式目の文章は誤読・疑問の生じる余地のある「悪文」であり、「分かりにくい」ものであったという解説は興味深い(109頁、220頁)。泰時は今ごろ、どう思っているか。

ところで、今の日本の民法では、所有権の取得時効は「20年」とされている。明治民法制定の際に設けられた規定であるが、実はどこから「20年」という数字が出てきたのかはっきりしないらしく、御成敗式目が第8条で時効を「20年」と定めたのを参照した、という説もあるという。真偽のほどは定かではないし、確かめようもないのだろうけれど、仮にそうだとすれば面白いところである。

佐藤雄基『御成敗式目』(中公新書


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