塩野七生『十字軍物語』第3巻・第4巻(新潮文庫)

塩野七生『十字軍物語』。後半部分に当たる第3巻と第4巻も文庫化された。 獅子心王リチャードとサラディンの両雄が激突した第三次十字軍(塩野氏の筆も走る,走る。)。ヴェネツィア共和国の思うがままとなった第四次十字軍(『海の都の物語』でもおなじみ…

安田浩一『「右翼」の戦後史』(講談社現代新書)

生徒に「ウヨクって何ですか?」と質問された。「右翼」とか「右派」というのは、フランス革命のときに議場左翼に陣取った急進派に対して、保守派が議場右翼に陣取ったことが言葉の由来で、個人主義を批判して伝統とか民族とか国家とか家族の一体感を強調し…

橋本治『これで古典がよくわかる』(ちくま文庫)

橋本治氏が亡くなった。 10代の終わり頃,橋本治氏の本ばかり読んでいた時期があった。しかも繰り返し繰り返し。なぜそこまで読み込んだのか,今となっては自分でもよく分からないのだが,何かこう,自分の気持ちを半歩先で代弁してくれているような感覚が…

工藤勇一『学校の「当たり前」をやめた。― 生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革 ―』(時事通信社)

ちょっと職員室とか同業者の間で話題になっている本の紹介をば。 東京の公立中学校が、クラス担任制を廃止し、定期考査を廃止し、運動会も変え、放課後の部活動を改革し、外部の人材を引き込みながら、次々と変化を遂げていった話である。 この本を読んだ同…

知念実希人『ひとつむぎの手』(新潮社)

年に一度の大イベント・本屋大賞。先日発表されたノミネート作品は,以下の10作品です。なお,発表時までに読み終え,当ブログで紹介していた作品は太字にしました。 ・三浦しをん『愛なき世界』(中央公論新社)・平野啓一郎『ある男』(文藝春秋)・木皿…

いしいしんじ『ブレッドはパン探偵』(進々堂)

有名な話ではあるが、京都市民の朝ごはんは、パンである。(京都府のパン消費量は全国1位!) 長らく日本屈指の工業都市であった京都の朝は、老若男女、さくっと食べてとっとと働きに出る、ということなのだろう。 もうひとつ、1人あたりコーヒー消費量の第1…

田中芳樹『銀河英雄伝説』全10巻(マッグガーデンノベルズ)

今週,本屋大賞のノミネート作が発表されました!ノミネート作10作品のうち,実に7作品が,このブログで紹介したものでした!すご~い!!この本屋大賞については,また日を改めてレビューしてみたいと思います。 --- さて。 全部読んだ~! 田中芳樹『銀…

隠岐さや香『文系と理系はなぜ分かれたのか』(星海社新書)

AIの前には文系も理系もないだろうといわんばかりのこのご時世にあって、高校生は新学期の科目選択を前に「文系だから数学とらない」だの「理系だからとりあえず物理と化学」だの、そういうことに頭を悩ましている。 そんな光景を横目に、タイトルから「も…

植本一子『フェルメール』(ナナロク社・ブルーシープ)

直木賞,予想外れた~!しかも受賞作,読んですらいない~!!未読作が受賞するのは,実に2年半ぶりである。う~ん,不覚。 --- さて。 フェルメール。現存する絵はわずか35,6作品程度(真贋等をめぐって争いあり)。いずれも珠玉の作品である。 僕はこ…

呉座勇一『陰謀の日本中世史』(角川新書)

最近、中世史が元気いい。2016年の『応仁の乱』を嚆矢として、『観応の擾乱』『承久の乱』などと立て続けに新書が出てきている。 本書は『応仁の乱』の呉座氏が、中世史にまつわる「陰謀論」や俗説を、次々となで斬りにしていくものである。 保元・平治の乱…

塩野七生『十字軍物語』第1巻・第2巻(新潮文庫)

年末年始はこれを読んで過ごした。塩野七生『十字軍物語』第1巻・第2巻。 単行本としては7,8年ほど前に出ていて,当時から興味を持っていたのだが,文庫化されるのを待っていたものである(塩野七生の本は単行本だとものすごく場所を取るので,文庫でそ…

村上春樹『辺境・近境』(新潮文庫)

ノモンハンの続編。 『ねじまき鳥クロニクル』の関係で村上春樹が雑誌の企画でノモンハンを訪ねたことがあると知って、手に取ってみた。ロングアイランドへ行ったり、アメリカ横断したりメキシコ行ったり、瀬戸内海の無人島に逗留したり、香川・うどんツアー…

直木賞大予想 & 本屋大賞ノミネート大予想

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。 さて,今月半ばに迫った直木賞発表と,その翌週に控えている本屋大賞ノミネートの発表。新年1回目になるこの投稿では,これらの予想をしてみたいと思います。 まずは,直木賞から。僕の…

安彦良和『虹色のトロツキー(1)~(8)』(潮出版社/中央公論新社)

本年もどうぞよろしくお願いいたします。 1月最初の授業、2時間連続のコマがとれたので、去年の終戦の日のNスぺ「ノモンハン―責任なき戦い」を見せようと思う。(一昨年の「インパール」に続き、Nスぺの終戦特集は昨年も徹底的にぶっこんできた。今年は何…

シェイクスピア『夏の夜の夢・あらし』(福田恆存訳,新潮文庫)

森見登美彦のインタビュー記事を読んだ。『熱帯』のベースとなった先行作品として,「千一夜物語」や「ロビンソン・クルーソー」とともに,シェイクスピア「テンペスト(あらし)」を挙げていた。テンペスト? う~ん,実は読んだことがない。どう関係してく…

山野辺太郎『いつか深い穴に落ちるまで』(河出書房新社)

主人公・鈴木は山梨県のとある建設現場にいる。リニア実験線の横で、表向きは温泉を掘っているのだが、実は極秘プロジェクト・・・ブラジルまで深い深い穴を掘ってつなげようというもので、終戦後まもなく運輸省の官僚・山本が新橋の闇市で思いついた案ある…

平野啓一郎『ある男』(文藝春秋)

今年度下半期の直木賞候補作が,以下のとおり発表されました。 ・今村翔吾『童の神』(角川春樹事務所)・垣根涼介『信長の原理』(KADOKAWA)・真藤順丈『宝島』(講談社)・深緑野分『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房)・森見登美彦『熱帯』(…

天野純希『雑賀のいくさ姫』(講談社)

雑賀孫一の娘・鶴は、難破した三本柱の南蛮商船を手に入れると、結婚を迫る父と許嫁の左近から逃れ、合戦によってではなく貿易商人として生きるために海に乗り出す。船には、スペイン貴族の末裔でサムライを求めて日本にやってきたジョアン、剣の達人二階堂…

佐藤友哉『転生!太宰治 転生して、すみません』(星海社FICTIONS)

島本理生『ファーストラヴ』が今年度上半期の直木賞を受賞して5か月。下半期の直木賞ノミネート作の発表が,いよいよ来週17日(月)に迫ってまいりました。 僕がこの半年に読んだ作品の中では, ・森見登美彦『熱帯』(文藝春秋)・塩田武士『歪んだ波紋…

保阪正康『昭和の怪物 七つの謎』(講談社現代新書)

昭和史研究の第一人者、保阪正康氏が、膨大なインタビュー記録の中から選りすぐった証言を軸に、昭和史の重大局面を描き出したもの。赤松貞雄(東條英機秘書官)、高木清寿(石原莞爾側近)、犬養道子(犬養毅の孫)、渡辺和子(渡辺錠太郎の娘)、瀬島龍三…

森見登美彦『熱帯』(文藝春秋)

以前この欄で紹介した深緑野分『ベルリンは晴れているか』ですが,なんと,今年度の「このミステリーがすごい!」の2位,「週刊文春ミステリーベスト10」の3位に入りました! 決してメジャーな作品ではないにもかかわらずこの順位! いや~,うれしい。 …

野村正實『雇用不安』(岩波新書)

「経済学を学ぶのは、経済学者にだまされないためである」というのがほんとうかどうかはさておき、書店に並ぶ経済学者あるいはエコノミストの本のうち、はたしてどれが正しくて、どれがあやしいのか、という判断は難しい。 ただ、リアルタイムではわからなく…

コンラッド『闇の奥』(黒原敏行訳,光文社古典新訳文庫)

アフリカの奥地で見た「真実」とは。コンラッド『闇の奥』。 船乗りマーロウは,川をさかのぼる蒸気船の船長になるべく,アフリカの奥地に赴いた。そこで耳にしたのは,「クルツ」という男の噂。マーロウは男に会おうとするが・・・。 今から100年以上も…

百田尚樹『殉愛』(幻冬舎)

今週のベストセラー 第1位 大川隆法 第2位 AKB 第3位 百田『日本コピペ紀』 「いい本が売れるのではなく、売れる本がいい本だ」ということではないにしても、出版社としても「売れる本で稼ぎ、その稼ぎで作りたい本を作る」というのは正直なところだろう…

伊坂幸太郎『フーガはユーガ』(実業之日本社)

伊坂幸太郎,約1年ぶりの新作である。『フーガはユーガ』。 ちょっと不思議な双子の物語。Amazonに「あらすじは秘密」とあるので,ここでもまあ,秘密にしておきたい。 しかし伊坂幸太郎,ハズレがない。人間である以上,普通は好調・不調の波がありそうな…

ピーター・タウンゼント(中里重恭翻訳、海渡千佳監修)『ナガサキの郵便配達』(スーパーエディション)

この本は、長崎で郵便配達中に被爆したスミテル(谷口稜曄)の物語である(The Postman of Nagasaki,1984)。 物語は、スミテル少年の家族が長崎に移り住むところから始まる。戦争が始まり、1945年8月9日を迎える。スミテル少年は、背中に大やけどを負いなが…

深緑野分『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房)

敗戦後のベルリンを舞台に,一人の少女の生き様を描く。深緑野分『ベルリンは晴れているか』。 1945年7月,4か国統治下に置かれたベルリン。音楽家のクリストフ・ローレンツは,毒による不審な死を遂げる。アメリカ軍の兵員食堂で働く少女・アウグステ…

遠藤周作『沈黙』(新潮文庫)

10代の頃、初めて読んで、震えた。 2回目は、スコセッシの映画を観た後読み返した。 明日から修学旅行の引率で長崎~外海に行く。現地で読む3回目は、どんな感じだろう。 沈黙 (新潮文庫) 作者: 遠藤周作 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1981/10/19 メディ…

太宰治『人間失格』(新潮文庫)

・・・結局,読んでしまった。太宰治『人間失格』。 中学生の頃に読んでから,もう何年になるだろう。僕にとっては衝撃であった。当時読んだ小説の中で衝撃を受けたもの(面白かった,ではなく)を3冊選べと言われれば,間違いなく入った。以後,一度も読み…

『出たばい、ちゃんぽん本。』

中学生に、長崎での一日自由行動の計画を立てさせると、とりあえず昼食は「中華街でちゃんぽん」らしいのですけれど、別に中華街と違ってもいろいろあるのになあ、とは思います。というわけで、今週いちばん印象に残った本が、これ。 自費出版のちゃんぽん本…