柴田三千雄『フランス史10講』(岩波新書)

フランスとドイツとイギリスの制度調査をすることになり,いろいろ下調べをした上,3か国にそれぞれ短期間滞在していたことがあった。 そこで強く感じたのは,ともすれば「ヨーロッパ」とひとくくりにしてしまいがちなこの3か国は,制度だけでなく,歴史も…

山本周五郎「失蝶記」(『日日平安』新潮文庫、『幕末物語 失蝶記』講談社文庫)

谷川主計と杉永幹三郎は小さい頃からの無二の親友である。ある日、谷川は大砲の暴発事故で聴力を失う。その谷川に近づいてきたのが、倒幕に向けて彼と志を同じくする梓久也だった。梓の導きで佐幕派の重鎮・真壁を暗殺しようとした谷川であったが、そこにい…

『天気の子 公式ビジュアルガイド』(角川書店)

映画は2回見た。パンフレットも買った。小説版も読んだ。アルバムもダウンロードした。ウェブ上に公開されている監督のインタビューも片っ端から読みまくった。 そして今回,『天気の子 公式ビジュアルガイド』が発売された。もちろん,すぐに読みました。 …

青山美智子『猫のお告げは樹の下で』(宝島社)

おもしろい本が読みたいなぁ・・・とぼんやり考えながら、いつもと違う道を歩いて帰ろうとすると、大きなタラヨウの樹のある神社があった。こんなところに神社なんてあったっけ、と思ってふらりと入ってみると、足元に1匹の猫がやってきた。黒くて、顔の額か…

塙 宣之『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』(集英社新書)

2001年に始まった漫才コンクール「M-1グランプリ」。ここしばらくは見ていなかったのだが,昨年,本当に久しぶりに見た。ずいぶん知らない漫才師が増えていた。とはいえ,お笑いでありながら,このひりひりする感じ。変わってないなぁ。 そのM-1グ…

大川周明『米英東亜侵略史』(土曜社)

日本時間1941年12月8日、日本軍はハワイ真珠湾とマレー半島を奇襲し、対米英開戦に踏み切った。緒戦の大勝利に日本中は歓喜した。本書はその興奮の真っただ中、12月14日から12日間にわたって行われたラジオ放送の速記であり、「大東亜戦の深甚なる世界史的意…

大木 毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(岩波新書)

ちょっと話題になっている新書ということで,読んでみた。大木 毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』。 1941年6月22日,ドイツ軍がソヴィエト連邦に侵攻。以後,1945年まで続いた独ソ戦。戦闘のみならず,ジェノサイド,収奪,捕虜虐殺が展開され,戦闘員…

猪瀬直樹『昭和16年夏の敗戦』(中公文庫)

今年の8月のNスペも、ガダルカナル、戦争を煽るメディア、二・二六事件、昭和天皇「拝謁録」と、盛りだくさんであった。TBSでも綾瀬はるかが被爆者とシベリア抑留体験者に話を聞いていたし、年に一度、こういう時間があることは大事なことだと思う。 さて、…

道尾秀介『いけない』(文藝春秋)

真夏の暑い夜に,少しひんやりするダークなミステリを。道尾秀介『いけない』。 先週紹介した伊坂幸太郎の作品は小説とイラスト(コミック)とのコラボレーションであったが,こちらの作品は小説と写真のコラボレーション。4話からなる連作短編集で,それぞ…

赤川次郎・新井素子・石田衣良・荻原浩・恩田陸・原田マハ・村山由佳・山内マリコ『吾輩も猫である』(新潮文庫)

「文藝春秋」を買ってしまった。 「むらさきのスカートの女」を読むためだ。芥川賞は文藝春秋の宣伝のためにあるわけだから、まさに菊池寛先生の思う壺である。 社会学者・古市くんへの選評もネットで話題になっていたので、気になっていた。なるほど辛辣。…

伊坂幸太郎『クジラアタマの王様』(NHK出版)

書店で新刊が並んでいるのを見ただけで,読みたい,と思わせる作家がいる。ここ数年は伊坂幸太郎がそうである。 というわけで,新刊『クジラアタマの王様』。 製菓会社の広報部で働くサラリーマンの「僕」。人気タレント「小沢ヒジリ」のふとしたコメントで…

ヨーロッパ企画第39回公演「ギョエー!旧校舎の77不思議」(作・演出 上田誠)

読書じゃなくてごめんなさい。 今年も始まりました、ヨーロッパ企画全国ツアー。今日がツアー初日の京都公演でした。で、今年も生徒と一緒に行ってきた。 今年は「学校の怪談」。走り回る人体模型、トイレの花子さん、徘徊する日本兵、平家の落武者、人面瘡…

新海 誠『小説 天気の子』(角川文庫)

前作『君の名は。』は公開直後に見に行った。ものすごく感動した。感動して,パンフレットや関連書籍やCDを一通り買って,読み,聞き込んだ。 さて,その新海誠監督の新作『天気の子』。こちらも公開直後に見に行った。 ・・・随分,攻めたなあ。 『君の名…

Shinichi Aizawa, Mei Kagawa, Jeremy Rappleye (ed.), High School for All in East Asia: Comparing Experiences (Routledge Studies in Education and Society in Asia)

某雑誌からこの本の書評を依頼されて2400字にまとめなければならず、というわけで今週はこれにかかりっきりでした。 日本、韓国、台湾、中国、ベトナム、香港、シンガポールにおける「高校教育拡大」の比較研究で、欧米のケースをもとに理論化されてきた教育…

NHK取材班『暴走するネット広告』(NHK出版新書)

書評で見かけて,面白そうなので読んでみた。NHK取材班『暴走するネット広告』。 いや~驚いた。 そもそも,2018年のテレビ広告費は1兆9123億円。これに対し,インターネット広告費は1兆7859億円。ほぼ拮抗しているというのである。しかも…

岡田憲治『なぜリベラルは敗け続けるのか』(集英社インターナショナル)

本書は6月ごろに話題になってそのときに手にしたものなので、ちょっと時期が遅い気もするけれど、参議院議員選挙が終わったということもあるので、メモ代わりに感想を書いておこうかと・・・。 本書は、左派勢力に対して渾身の支持を与え続けてきた筆者が、…

今村夏子『むらさきのスカートの女』(朝日新聞出版)

窪美澄『トリニティ』は直木賞にあと一歩届かなかった。決選投票には残ったが,「実在する出版社をモデルとしており,当時を知っている選考委員も多く,厳しい意見が多かった」とのこと。そう言われてしまうと仕方がない気もするが,やはり残念である。次に…

池井戸潤『ノーサイド・ゲーム』(ダイヤモンド社)

ルーズヴェルト・ゲームは野球、陸王は駅伝・・・。「下町ロケット」スポーツ編、今回はラグビーでした。 逆境を乗り越え、最後には・・・。 予想に違わず、一気に読了。 秩父宮の歓声が聞こえてくるようです。おもしろかった♪ ノーサイド・ゲーム 作者: 池…

古市憲寿『百の夜は跳ねて』(新潮社)

単なる話題先行の作品だと思っていたが(ごめんなさい),書店でぱらぱらめくってみたところ,面白そうだったので読んでみた。古市憲寿『百の夜は跳ねて』。 高層ビルの窓拭きをしている「僕」。ある日,たくさんの箱の積まれた部屋の中にいる「老婆」と目が…

ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)

『トリニティ』読みました。すごすぎる。今年一番の本が、もう出てしまったのかな。映像まで見えた。NHKはドラマ化するだろう、きっと。 というわけで、ちょっと他の小説を読む気にはならず、気分転換に何気なく手に取った本。それがまた、とてもよかった…

日本経済新聞社編『地銀波乱』(日経プレミアシリーズ)

地方において強く感じられるのが,地銀の存在感である。 駅前とか街中とかの一等地に大きくて立派な本店がある。街のあちこちで支店を見かける。様々な公共イベントの後援・スポンサーになっていることも少なくない。 その地銀が,今,危機にあるという。日…

鎌田浩毅『富士山噴火と南海トラフ』(講談社ブルーバックス)

東京に向かう新幹線の中で、この本を読みながら、今、富士山が噴火したら、京都にはしばらく帰れないんだよなぁ・・・などと考えてみた。 「火山灰」「溶岩流」「噴石・火山弾」「火砕流・火砕サージ」「泥流」「山体崩落」のどれひとつとっても、その被害は…

宗田 理『ぼくらの七日間戦争』(角川文庫)

『ぼくらの七日間戦争』がアニメ映画化されると聞いた。 青少年向け小説の古典でありながら,実はこれまで読んだことがなかった。こういうのって,自分が青少年の頃に読まなかったら一生読まないんだよな・・・と思いつつ,この際読んでみた。 ・・・おお,…

津原泰水『ヒッキーヒッキーシェイク』(ハヤカワ文庫JA)

津原やすみ、という作家さんはこれまで読んだことがなかったのだが、幻冬舎の見城社長とのtwitter上での泥仕合を観戦して、それなら読んでみようかな、と逆炎上商法に乗っかってみた。 たしかに幻冬舎からハードカバーで出したら1,800冊しか売れなかったのも…

窪 美澄『トリニティ』(新潮社)

2019年度上半期の直木賞候補作が,以下のとおり発表されました。 ・朝倉かすみ『平場の月』(光文社)・大島真寿美『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』(文藝春秋)・窪美澄『トリニティ』(新潮社)・澤田瞳子『落花』(中央公論新社)・原田マハ『美しき愚か…

佐藤弘樹『賢人の雑学』(知的シゲキBooks)

京都・北山にFM局が開局したのが25年前。大阪じゃなくて自分の見上げている空模様がラジオから流れてくるのが、うれしかった。 目覚まし時計代わりにタイマーでつけていたラジカセから、7時になると、 「おはようございます、さとうひろきです。今朝の京都…

土橋章宏『引っ越し大名三千里』(ハルキ文庫)

いよいよ直木賞候補作発表の季節がやってまいりました。当ブログで紹介した米澤穂信『本と鍵の季節』,木皿泉『カゲロボ』,柚木麻子『マジカルグランマ』はノミネート入りするのか?窪美澄,原田マハらの直木賞待望組はどうなるのか?そして,芸能界作家・…

星野博美『転がる香港に苔は生えない』(文春文庫)

先週末、香港で「逃亡犯条例」に反対する100万人規模のデモが起きた。 5年前の「雨傘運動」の経験を活かし、当局は早めに潰しにかかっている。 香港と聞いてまず思い浮かんだのは、星野博美のこの傑作ノンフィクションである。 香港返還前後の香港の街に暮ら…

柚木麻子『マジカルグランマ』(朝日新聞出版)

書評で興味を惹かれたので読んでみた。柚木麻子『マジカルグランマ』。 タイトルから分かるとおり,いつもニコニコしている優しいおばあちゃんが,いろいろ解決する物語・・・ ・・・ではない。 マジカルニグロ,という言葉がある。一昔前のハリウッド映画な…

アンドルー・ゴードン『日本の200年』(みすず書房)

ハーバード大学のアンドルー・ゴードン教授による、日本近現代史の教科書である。「徳川体制の危機」「近代革命」「帝国日本」「戦後日本と現代日本」の4部構成となっており、「徳川の平和」に始まり新版では東日本大震災以後までを描く。 近代化の過程で急…