白井聡『国体論 菊と星条旗』(集英社新書)

今年上半期、たくさんの新書が刊行されたけれど、個人的に1位はこれだと思う。 『永続敗戦論』で一躍論壇に躍り出た白井聡氏が、近代前半(明治維新~敗戦)と近代後半(敗戦~現在)について「国体」の形成・安定・崩壊、という3つの時代区分を設定しなが…

ショーペンハウアー『幸福について』(鈴木芳子訳,光文社古典新訳文庫)

話題の映画『カメラを止めるな!』(上田慎一郎監督)見てきましたよ~。いや~,最高!!何を書いてもネタバレになりそうなので何も書けないけれど,もう最高!!この作品を生み出した全てのスタッフとキャストに感謝です。ありがとう!! (なお,画面酔い…

野澤千絵『老いる家 崩れる街』(講談社現代新書)

オリンピックのマラソン競技ためにサマータイムの導入を検討するとかいう、頭のクラクラするような話を聞いて、この本のことをふと思い出した。 続々と建設される新築マンションを見ながら、人は減るのに家建てて、どうなるんだろう、とつねづね思っていた。…

『ヨハネの黙示録』(小河陽訳,講談社学術文庫)

再び『日経おとなのOFF』8月号から。 名著特集の「宗教書」のコーナーで,『法華経』と並んで紹介されていたのが『聖書』である。『聖書』かあ・・・。読んだ部分と読んでいない部分とがあるなあ。いや,むしろ読んでいない部分の方が圧倒的に多いか。・…

遠藤周作『女の一生 2部 サチ子の場合』(新潮文庫)

幼馴染のサチ子と修平、そしてコルベ神父の3人の人生を交差させながら、少しずつ息苦しくおかしくなっていく時代の中で、しかしそんな時代だからこそ浮かび上がる人間愛が、静かに、熱く、円熟期の遠藤周作が筆遣いによって紡ぎだされていく。 コルベ神父は…

橋爪大三郎=植木雅俊『ほんとうの法華経』(ちくま新書)

『日経おとなのOFF』という雑誌があって,1,2年に一度くらい,名著特集をする。今月発売の8月号がその名著特集の号で,古今東西の様々な名著が紹介されている。この8月号を眺めながら,この本は読んだなあ,とか,まだ読んでないなあ,今度読もうか…

小山茂仁『私学の民主化 理論と実践』(私学ニュース社)

すみません、一般にはほとんど手に入らない変な本について書きます。 「おすすめ」ではないのですが、けっこう(いろんな意味で)自分として考えることが多かったもので・・・。 本書は1980年の刊行で、1970年代に著者が行った講演や著した論考をまとめたも…

H・G・ウェルズ『タイムマシン』(池央耿訳,光文社古典新訳文庫)

島本理生さん直木賞受賞おめでとうございます! 問題作だなんて言ってごめんなさい。テーマが重すぎるだなんて言ってごめんなさい。皆さんぜひ読もう! 読んで,主人公・真壁由紀の,そして被告人・聖山環菜(かんな)のつらさ,苦しさを共感しよう! 大丈夫…

新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)

『宇喜多の楽土』おもしろかったです。直木賞は残念でしたね。 さて、今週はちょっとAIとシンギュラリティについて思うところがあって、何冊かまとめて読んでみた。 そうした中で、あらためて本書がよくまとまった本だということがわかったので、読み直し…

直木賞大予想!

いよいよ来週7月18日(水),第159回直木三十五賞が発表されます。どの作品が栄冠を勝ち取るか。誰が「直木賞作家」との肩書き(?)を勝ち取るか。今回はその大予想をしたいと思います。・・・なお,ノミネート作品のうち上田早夕里『破滅の王』と本…

森見登美彦『宵山万華鏡』(集英社文庫)

今日は宵山。 年に一度、夢か現か、京の街にワンダーランドが現れる夜・・・。 舞台は京都・洛中。7月16日夜、祇園祭宵山の雑踏に迷い込んでしまった小学生の姉妹の話。蟷螂山、南観音山、鯉山、駒形提灯、偽祇園祭と祇園祭司令部特別警務隊、金魚鉾、宵山様…

瀧羽麻子『ありえないほどうるさいオルゴール店』(幻冬舎)

たまには心安らぐ連作短編集を。ということで,瀧羽麻子『ありえないほどうるさいオルゴール店』。 運河のある北の町でひっそりと営業しているオルゴール店。その店主にはある「能力」があった。“お客様の心に流れる曲”を仕立ててくれるという・・・。 1作…

佐藤優・片山杜秀『平成史』(小学館)

2018年6月18日。揺れた。 震度5を体験したのは、1995年1月17日、2011年3月11日に次いで、3度目だ。 平成という時代がまもなく終わる。平成はいろんなものが揺れた時代だった。 このふたりが語る「平成」という時代は、昭和という知的…

ジョン・リード『世界を揺るがした10日間』(伊藤真訳,光文社古典新訳文庫)

「『岩波文庫の100冊の本』って知ってるか? 僕ら学生の頃は,東大・京大生はこれを70冊読め,って言われてたんや。君ら,読んでへんやろ。」4,5年前,ある会合で70歳近くの大先輩から言われた言葉である。帰宅してから調べてみると,昭和36年に…

門井慶喜『新選組の料理人』(光文社)

門井さんは、その人にいきますか、というところにスポットライトを当てる。 宮沢賢治の父上だったり、利根川東遷を指揮した伊奈忠次だったり、慶長小判をつくった後藤庄三郎だったり。 今回の主人公は、ひょんなことから新選組の専属シェフとなった菅沼鉢四…

島本理生『ファーストラヴ』(文藝春秋)

・上田早夕里『破滅の王』(双葉社)・木下昌輝『宇喜多の楽土』(文藝春秋)・窪美澄『じっと手を見る』(幻冬舎)・島本理生『ファーストラヴ』(文藝春秋)・本城雅人『傍流の記者』(新潮社)・湊かなえ『未来』(双葉社) 今週発表された直木賞候補作で…

麻耶雄嵩『友達以上探偵未満』(角川書店)

ここしばらく重たい本が続いたので,たまには肩肘の張らないミステリを,と思って読んだところ,意外に面白かった。麻耶雄嵩『友達以上探偵未満』。 事件が起こって,謎があって,それを「探偵」役が謎解きする,という王道の本格ミステリだが,本作品の「探…

是枝裕和『万引き家族』(配給:GAGA、ノベライズ:宝島社)

柴田治は、妻の信代、息子の翔太、母の初枝、妻の妹の亜紀の5人暮らし。足りない生活費を万引きで補って、なんとか暮らしている。凍えそうなある冬の夜のこと、親から虐待を受けてベランダでうずくまる少女を治と翔太は家に連れてくる。返しにいくのだが、「…

直木賞ノミネート作品・大予想!

さて,今年も上半期の直木賞の時期が近づいてまいりました。公式twitterによると,ノミネート作品は「6月中旬」に発表とのこと。今回は,上半期に発表された文芸作品(全部で数百冊くらいあるのか?)の中から,果たしてどんな作品がノミネートされるのか,…

吉川徹『日本の分断』(光文社新書)

東京で5歳児が虐待死させられた事件に、心が痛み続けた一日。 前著『学歴分断社会』では、日本社会の分断線を「大卒」と「非大卒」の間に引き、現代日本では両者がほぼ半分ずつ暮らしていて、前者の子どもは前者、後者の子どもは後者として、階層の再生産が…

柚月裕子『凶犬の眼』(角川書店)

あの衝撃の警察小説『孤狼の血』に,まさかの続編が出た。柚月裕子『凶犬の眼』。 平成2年の広島県内。田舎の駐在所に左遷された日岡秀一。カレンダーに×印をつけながら毎日を虚しく過ごしていたところに,ある男がやってくる。それは,殺人事件で指名手配…

半藤一利『歴史と戦争』(幻冬舎新書)

「半藤一利語録」が出た。本書は氏の膨大な著作の中から一段落ずつ取り出してまとめたものである。 『日本のいちばん長い日』に始まり、氏の幕末氏、近代史、昭和史を一貫する視点は、為政者の偽善、危機にあって浮かび上がる真の知性と勇気であり、そしてそ…

木下昌輝『宇喜多の楽土』(文藝春秋)

デビュー作『宇喜多の捨て嫁』は強烈だった。戦国の梟雄・宇喜多直家とその娘・於葉(およう)を中心に,裏切りあり,策謀ありの世界が描かれた。まるでページから狂気とか腐臭とかが沸き立ってくるようであった。 あれから4年。今度は直家の嫡男・宇喜多秀…

酒井啓子『9.11後の現代史』(講談社現代新書)

5月15日という日が、犬養首相の命日であり、葵祭で御所のあたりが一時通行止めになる日であり、 うっすらと沖縄本土復帰の日であるというあたりまでは記憶にあったが、イスラエルが独立を宣言してパレスチナ難民が生まれた「ナクバ(大惨事)の日」だとは気…

窪 美澄『じっと手を見る』(幻冬舎)

デビュー作『ふがいない僕は空を見た』は強烈だった。過激な描写,リズミカルな文体。山本周五郎賞を取り,本の雑誌ベスト10の1位に選ばれ,本屋大賞も2位に入り,果ては映画化されてトロント国際映画祭に正式出品された。その結果,・・・2作目以降も…

鷺沢萠『ウェルカム・ホーム!』(新潮文庫)

大先生オススメの『そして、バトンは渡された』を読んで、ほっこりと余韻にひたりながらふらっと入った西院駅前のブックファーストにて、「Push! 1st.」と称してブックファーストのイチオシ本を紹介するコーナーを見つける。 『そして、バトンは渡された』の…

村山由佳『風は西から』(幻冬舎)

過労自死をテーマにした小説である。村山由佳『風は西から』。 大手居酒屋チェーンに就職した健介は,若くして繁忙店の店長を任されるが,そこで待ち受けていたのは,尋常ではない業務量と,心が折れるほどの叱責だった。彼女の千秋は,そんな健介を心配しつ…

角田光代『私はあなたの記憶のなかに』(小学館)

1996年から2008年までの間に発表された8本の短編をまとめたもの。 タイムカプセルに閉じ込められた「角田光代」を掘り出して味わう作品集。 個人的感想を述べれば、最初の「父とガムと彼女」がすごくよかったので、期待して読み進めたのですが・・・「記憶」…

木皿 泉『さざなみのよる』(河出書房新社)

脚本家の夫婦ユニット・木皿泉の5年ぶりにして2作目の小説である。『さざなみのよる』。 43歳の女性・小国ナスミと,彼女の周囲の人々とを描く連作短編集である。NHKのお正月ドラマ「富士ファミリー」のスピンオフ作品なのだが,見ていなくても読める…

吉本ばなな『キッチン』(福武文庫、角川文庫)

義父が亡くなった。長くはないとは言われていたものの前の日まで元気だったのに、容態が急変して、あっという間に心臓が停止した。 夜伽で義父とワインを傾けたりしながら(寝たけど)、ひととおり葬儀も済んで、家族でファミレスに繰り出した。 無性に肉が…