古市憲寿『百の夜は跳ねて』(新潮社)

単なる話題先行の作品だと思っていたが(ごめんなさい),書店でぱらぱらめくってみたところ,面白そうだったので読んでみた。古市憲寿『百の夜は跳ねて』。 高層ビルの窓拭きをしている「僕」。ある日,たくさんの箱の積まれた部屋の中にいる「老婆」と目が…

ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)

『トリニティ』読みました。すごすぎる。今年一番の本が、もう出てしまったのかな。映像まで見えた。NHKはドラマ化するだろう、きっと。 というわけで、ちょっと他の小説を読む気にはならず、気分転換に何気なく手に取った本。それがまた、とてもよかった…

日本経済新聞社編『地銀波乱』(日経プレミアシリーズ)

地方において強く感じられるのが,地銀の存在感である。 駅前とか街中とかの一等地に大きくて立派な本店がある。街のあちこちで支店を見かける。様々な公共イベントの後援・スポンサーになっていることも少なくない。 その地銀が,今,危機にあるという。日…

鎌田浩毅『富士山噴火と南海トラフ』(講談社ブルーバックス)

東京に向かう新幹線の中で、この本を読みながら、今、富士山が噴火したら、京都にはしばらく帰れないんだよなぁ・・・などと考えてみた。 「火山灰」「溶岩流」「噴石・火山弾」「火砕流・火砕サージ」「泥流」「山体崩落」のどれひとつとっても、その被害は…

宗田 理『ぼくらの七日間戦争』(角川文庫)

『ぼくらの七日間戦争』がアニメ映画化されると聞いた。 青少年向け小説の古典でありながら,実はこれまで読んだことがなかった。こういうのって,自分が青少年の頃に読まなかったら一生読まないんだよな・・・と思いつつ,この際読んでみた。 ・・・おお,…

津原泰水『ヒッキーヒッキーシェイク』(ハヤカワ文庫JA)

津原やすみ、という作家さんはこれまで読んだことがなかったのだが、幻冬舎の見城社長とのtwitter上での泥仕合を観戦して、それなら読んでみようかな、と逆炎上商法に乗っかってみた。 たしかに幻冬舎からハードカバーで出したら1,800冊しか売れなかったのも…

窪 美澄『トリニティ』(新潮社)

2019年度上半期の直木賞候補作が,以下のとおり発表されました。 ・朝倉かすみ『平場の月』(光文社)・大島真寿美『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』(文藝春秋)・窪美澄『トリニティ』(新潮社)・澤田瞳子『落花』(中央公論新社)・原田マハ『美しき愚か…

佐藤弘樹『賢人の雑学』(知的シゲキBooks)

京都・北山にFM局が開局したのが25年前。大阪じゃなくて自分の見上げている空模様がラジオから流れてくるのが、うれしかった。 目覚まし時計代わりにタイマーでつけていたラジカセから、7時になると、 「おはようございます、さとうひろきです。今朝の京都…

土橋章宏『引っ越し大名三千里』(ハルキ文庫)

いよいよ直木賞候補作発表の季節がやってまいりました。当ブログで紹介した米澤穂信『本と鍵の季節』,木皿泉『カゲロボ』,柚木麻子『マジカルグランマ』はノミネート入りするのか?窪美澄,原田マハらの直木賞待望組はどうなるのか?そして,芸能界作家・…

星野博美『転がる香港に苔は生えない』(文春文庫)

先週末、香港で「逃亡犯条例」に反対する100万人規模のデモが起きた。 5年前の「雨傘運動」の経験を活かし、当局は早めに潰しにかかっている。 香港と聞いてまず思い浮かんだのは、星野博美のこの傑作ノンフィクションである。 香港返還前後の香港の街に暮ら…

柚木麻子『マジカルグランマ』(朝日新聞出版)

書評で興味を惹かれたので読んでみた。柚木麻子『マジカルグランマ』。 タイトルから分かるとおり,いつもニコニコしている優しいおばあちゃんが,いろいろ解決する物語・・・ ・・・ではない。 マジカルニグロ,という言葉がある。一昔前のハリウッド映画な…

アンドルー・ゴードン『日本の200年』(みすず書房)

ハーバード大学のアンドルー・ゴードン教授による、日本近現代史の教科書である。「徳川体制の危機」「近代革命」「帝国日本」「戦後日本と現代日本」の4部構成となっており、「徳川の平和」に始まり新版では東日本大震災以後までを描く。 近代化の過程で急…

プラトン『パイドン——魂について』(納富信留訳,光文社古典新訳文庫)

『テアイテトス』を刊行したばかりの光文社古典新訳文庫から,またプラトンの新訳が出た。『パイドン』である。副題は『魂について』。 ソクラテスの弟子の1人パイドンは,「ソクラテス最後の日」に立ち会う。そこでソクラテスと弟子たちとの間で取り交わさ…

成井豊・真柴あずき『俺たちは志士じゃない』(論創社)

5月31日、突然、演劇集団キャラメルボックスが活動を休止するというニュースが飛び込んできた。それも発表したその日のうちに。 「上川隆也がかつて在籍していた」という枕詞で語られるこの劇団だが、たしかに彼が看板役者であったことは事実だが、個人的に…

朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』(中央公論新社)

既に読み終えてから4,5日経つが,まだこの小説のインパクトから抜け出せないでいる。朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』。 北海道の病院で植物状態のまま眠り続ける「智也」と,これを見守る「雄介」。2人の間に横たわるのは,友情か,それとも…

大澤真幸『社会学史』(講談社現代新書)

新書のジャンルに「自立本」というのがあるんだそうで、自立するくらい分厚い新書本のことをいうらしい(そのまんま)。 本書も本文630ページの自立本。税別1,400円だから1ページ2円ちょっと。内容は、大澤真幸先生が、講談社の編集者さん相手に社会学史の講…

東野圭吾『パラレルワールド・ラブストーリー』(講談社文庫)

東野圭吾の『パラレルワールド・ラブストーリー』が,玉森裕太主演で映画化されるとのこと。 東野圭吾。一時期よく読んだなあ。そういえば昔,せんせいのウェブサイトに最初に投稿した書評は,確か東野圭吾の『秘密』だったか。 『パラレルワールド・ラブス…

吉田兼好作・佐藤春夫訳『現代語訳 徒然草』(河出文庫)

本棚からポトリと出てきたのが、15年前に買った『徒然草』(佐藤春夫訳)。 『徒然草』は高校生のときにも古文の授業の教材に出てきたし、その後もひととおり読んだつもりでいたものだが、兼好法師の「つぶやき」の意味は、人生の後半になってこそ、味わいが…

ジョージ・オーウェル『一九八四年』(高橋和久訳,ハヤカワepi文庫)

映画『キングダム』見てきました!いや~,思っていた以上によかった!原作の再現度がすごい! ・・・っていうか,そもそも映画として面白い!!・・・続編,作るのかなぁ。 --- さて。 ゴールデンウィークにちょっと時間ができたので,たまには骨太の本でも…

青木理『安倍三代』(朝日文庫)

安倍晋三は、岸信介の孫である。 同時に彼は、政治家・安倍寛の孫でもある。その血は一粒種の晋太郎に受け継がれ、そして晋三へと連なっているはずである。しかし、晋三からは「安倍」カラーが見えない。 それはなぜか。 筆者は晋三のもう一方のルーツを求め…

橋本治『思いつきで世界は進む』(ちくま新書)

先ごろ亡くなった橋本治について,橋爪大三郎が熱烈な追悼文を寄せていた。 「さようなら橋本治さん」~ひとの死とは何か、を考える(橋爪 大三郎) | 現代ビジネス | 講談社(1/2) そうか,このお二人,面識があったんだな。・・・などと思っていると,今…

遠藤周作『反逆(上・下)』(講談社文庫)

大先生、新天地での1ヶ月、おつかれさまでした! さて、遠藤周作は荒木村重をどう描いたのか。 主な登場人物はほぼ同じ。織田信長と、信長を裏切った松永久秀・荒木村重・明智光秀(そして実は羽柴秀吉もそのひとり)を軸に、賤ヶ岳の合戦に勝利して秀吉が天…

伊坂幸太郎『シーソーモンスター』(中央公論新社)

おっつかれさま~っ!・・・とにかく全力で駆け抜けた1か月であった。 ---さて。 伊坂幸太郎の呼びかけで始まった8組9名の作家による競作企画「螺旋プロジェクト」。『シーソーモンスター』は,呼びかけ人・伊坂幸太郎自身の単行本であり,中編2編を収め…

上田秀人『傀儡に非ず』(徳間時代小説文庫)

摂津・有岡城の荒木村重が信長を裏切り、一族郎党皆殺しになりながら本人は生き延びたというエピソードは、断片的には知っていて、どっちかというと、大河ドラマで黒田官兵衛を土牢に監禁した人というイメージの方が強かった。 なぜ村重が信長を裏切ったのか…

木皿泉『カゲロボ』(新潮社)

木皿泉,3作目の小説である。『カゲロボ』。 日常生活にロボットがこっそり溶け込んでいる世界。ささやかな「罪」と「赦し」を描いた連作短編集である。 これまでの『昨夜のカレー,明日のパン』や『さざなみのよる』とは異なり,ちょっとダークな描写も出…

前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)

バッタ研究者の前野氏が、2年間滞在したモーリタリアでの研究生活をまとめたものである。それが一筋縄ではいかない。 トラブルをものともせず前進する生命力はサイバラ先生を彷彿とさせる。仮説を立ててすぐに実験するあたりは科学者としての真髄を見せ、相…

半藤一利『日本のいちばん長い日 決定版』(文春文庫)

今年度の本屋大賞は瀬尾まいこ『そして,バトンは渡された』に決定!おめでとうございます!! いや~,良かった!! --- さて。 引っ越しの時って,みんなどんな本を携帯しているんだろう。僕はやっぱり,あれかな。名著だと言われている本で,文庫になって…

ジョン・クラッセン(長谷川義史/訳)『ちがうねん』クレヨンハウス

大先生、本屋大賞、おめでとうございます! ホーキング博士の本を紹介した直後に、ブラックホールが撮影されるなんて、これもまた、大先生、やりましたね! さて、この1週間に読んだ本がことごとくハズレだったので、今週は絵本。 大人が気に入った絵本と子…

スティーヴン・ホーキング『ビッグ・クエスチョン―〈人類の難問〉に答えよう』(青木薫訳,NHK出版)

北の大地からの初投稿。 昨年亡くなられたホーキング博士。その最後の書き下ろし本である。『ビッグ・クエスチョン―〈人類の難問〉に答えよう』。 「神は存在するのか?」「宇宙はどのように始まったのか?」など10個の「ビッグ・クエスチョン」にホーキン…

綿矢りさ『手のひらの京(みやこ)』(新潮文庫)

奥沢家長女・綾香 = 31歳にして婚活開始。次女・羽依 = OL、かなりモテる。三女・凜 = リケジョ(M2)、異性に興味なし。お母さん = 60歳になったので主婦の定年を宣言。お父さん = にぎやかな女系家族の中でいつもマイペース。 京都本コーナーに平…