有馬哲夫『原爆 私たちは何も知らなかった』(新潮新書)

このブログも、100エントリーを超えました。来週から2年目に突入します。200エントリーに向けて、がんばってまいりましょう。 = 「日本への原爆投下が決定された」という一文の次に、どのような言葉が続くだろうか。「こうして広島・小倉・新潟などが投下目…

三浦しをん『愛なき世界』(中央公論新社)

恋愛小説。いや,恋愛「未満」小説というべきか。三浦しをん『愛なき世界』。 洋食屋の見習い・藤丸陽太は,植物学研究室の大学院生・本村紗英がちょっと気になる。いや,すごく気になる。気になるのだけれども,本村はシロイヌナズナの研究が大好きで・・・…

辻村深月『青空と逃げる』(中央公論新社)

逃避行。ささやかな平和な暮らしが続くほど、次の崩壊が近づく。賽の河原の石積みのように。 母と子は、逃げる。四万十へ、別府へ、仙台へ。そこで出会う人々が優しすぎて温かすぎる。だからこそ、切ない。そして、力は成長する。早苗とともに。 最後の最後…

菅野仁『友だち幻想』(ちくまプリマー新書)

売れている本とか話題書とかは普段はあまり取り上げないのだけれど,この本はちょっと紹介しておきたい。菅野仁『友だち幻想』。 友だちとのつきあい方。人との距離感。そういったことに悩む若者向けに書かれた本である。筆者は社会学者。10年も前に書かれ…

『枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』(扶桑社)

こちら、通常国会末の7月20日に行われた、枝野立憲民主党代表による2時間43分のフィリバスター演説(内閣不信任決議案提出の趣旨説明なんだから、フィリバスター=議事妨害だったのかどうかはさておき。)を、ほぼそのまま書き起こして出版されたもの。数枚…

垣根涼介『信長の原理』(角川書店)

先に書きますね~。 --- 垣根涼介の新刊が出た。『光秀の定理』以来の戦国作品,そして初めての「信長」作品である。『信長の原理』。 「何故おれは,裏切られ続けて死にゆくのか。」--織田信長の生涯を軸に,その家臣団らの恭順と離反,裏切り,そしてこ…

聖徳太子『法華義疏(抄)・十七条憲法』(瀧藤尊教ほか訳,中公クラシックス)

『もういちど読む山川倫理』に,「十七条憲法」の興味深い解説があった。第一条の「和」の精神とは,ただ周囲に同調せよという意味ではなく,「みんなが集まってさまざまな意見を述べ合う中から,物事の正しい道理を見い出そうとすること」を指すというので…

黒木亮『島のエアライン(上・下)』(毎日新聞出版)

伊丹空港から熊本を経由して天草空港まで、イルカ姿のプロペラ機が飛んでいる。天草エアラインである。 島民の悲願であった天草空港の開港と、そこに乗り入れる航空会社の確保、それができないならばと自分たちで航空会社を立ち上げ、経営危機を乗り越えてい…

塩田武士『歪んだ波紋』(講談社)

「誤報」をテーマにした連作短編集である。塩田武士『歪んだ波紋』。 5つの短編が収められている。主人公はいずれも現役の新聞記者,あるいは元記者。それぞれの立場から,「誤報」に,そしてその背後にある「悪意」に気づかされる・・・。 記者としての事…

湊かなえ『ブロードキャスト』(KADOKAWA)

へえ、放送部。西加奈子か、佐藤多佳子か、・・・え、湊かなえですか? 思えば10年前の『告白』は衝撃だった。そのイメージがずっと自分の中に付きまとっているので、表紙のデザインも含めてちょっと意外な感じがした。 舞台は高校放送部。ケガで陸上を断念…

中山元『アレント入門』(ちくま新書)/仲正昌樹『悪と全体主義―ハンナ・アーレントから考える』(NHK出版新書)

ハンナ・アーレント。今ちょっとしたブームである。トランプ政権の誕生後,全米でその著作が再び売れ出した。日本でも昨年,『全体主義の起原』と『エルサレムのアイヒマン』の新版が出版された。このうち『全体主義の起原』はNHKの「100分de名著」で…

「ホーム」をめぐる7つのショートストーリー(ビッグイシュー日本版)

今号のビッグイシューは、15周年を記念して、「ホーム」をめぐる7編の短編集が巻頭特集になっていた。 曰く、“ホーム”には、家、家族、故郷、故国、住処、居場所、隠れ場所、収容施設、乗降場、発祥地、本場、本拠地、陣地……など無数ともいえる意味があり…

村田沙耶香『消滅世界』(河出文庫)

ディストピア小説か,それともユートピア小説か。村田沙耶香『消滅世界』。 2年前の芥川賞受賞作『コンビニ人間』は衝撃だった。何が普通で,何が普通ではないのかという感覚が,根元から揺さぶられた。その『コンビニ人間』よりも「遙かに力作」(佐藤優・…

西原理恵子『上京ものがたり』(小学館ビッグコミックス)

NHKーBS1に「最後の講義」という番組がある。今日が最後の一日だとしたら、あなたはどのようなメッセージを残しますか?、というもので、先週の放送では、りえぞう先生が東京女子大学で学生さんを相手に、女性の生きざまについて語っていた。真面目に…

須賀しのぶ『夏空白花』(ポプラ社)

夏。終戦。そして,高校野球。須賀しのぶ『夏空白花(なつぞら・はっか)』は,終戦直後,「全国中等野球大会」(後の高校野球)復活のために奔走する一記者の物語である。 話は昭和20年8月15日,玉音放送の場面から始まる。新聞記者の神住(かすみ)は…

倉田タカシ『うなぎばか』(早川書房)

暑い。こんな日には、うなぎでも食べて、元気出そうか。そんなわけで、鰻重を食べる代わりに、本屋で手にしたのが、うなぎばか。 舞台は、うなぎが絶滅した世界。 秘伝のうなぎのたれをめぐる三世代の話(うなぎばか)。密漁監視するうなぎ型ロボットと「さ…

パスカル『パンセ(抄)』(鹿島茂訳,飛鳥新社)/アウグスティヌス『告白 III』(山田晶訳,中公文庫)

これまでいろいろ思想・哲学の本をアドホックに読んできたけれど,ちょっと基礎的なところから整理したくなって,小寺聡編『もういちど読む山川倫理』(山川出版社)を購入して読んだ(夏休みだし。)。高校の教科書を大人向けにアレンジしたシリーズの一冊…

白井聡『国体論 菊と星条旗』(集英社新書)

今年上半期、たくさんの新書が刊行されたけれど、個人的に1位はこれだと思う。 『永続敗戦論』で一躍論壇に躍り出た白井聡氏が、近代前半(明治維新~敗戦)と近代後半(敗戦~現在)について「国体」の形成・安定・崩壊、という3つの時代区分を設定しなが…

ショーペンハウアー『幸福について』(鈴木芳子訳,光文社古典新訳文庫)

話題の映画『カメラを止めるな!』(上田慎一郎監督)見てきましたよ~。いや~,最高!!何を書いてもネタバレになりそうなので何も書けないけれど,もう最高!!この作品を生み出した全てのスタッフとキャストに感謝です。ありがとう!! (なお,画面酔い…

野澤千絵『老いる家 崩れる街』(講談社現代新書)

オリンピックのマラソン競技ためにサマータイムの導入を検討するとかいう、頭のクラクラするような話を聞いて、この本のことをふと思い出した。 続々と建設される新築マンションを見ながら、人は減るのに家建てて、どうなるんだろう、とつねづね思っていた。…

『ヨハネの黙示録』(小河陽訳,講談社学術文庫)

再び『日経おとなのOFF』8月号から。 名著特集の「宗教書」のコーナーで,『法華経』と並んで紹介されていたのが『聖書』である。『聖書』かあ・・・。読んだ部分と読んでいない部分とがあるなあ。いや,むしろ読んでいない部分の方が圧倒的に多いか。・…

遠藤周作『女の一生 2部 サチ子の場合』(新潮文庫)

幼馴染のサチ子と修平、そしてコルベ神父の3人の人生を交差させながら、少しずつ息苦しくおかしくなっていく時代の中で、しかしそんな時代だからこそ浮かび上がる人間愛が、静かに、熱く、円熟期の遠藤周作が筆遣いによって紡ぎだされていく。 コルベ神父は…

橋爪大三郎=植木雅俊『ほんとうの法華経』(ちくま新書)

『日経おとなのOFF』という雑誌があって,1,2年に一度くらい,名著特集をする。今月発売の8月号がその名著特集の号で,古今東西の様々な名著が紹介されている。この8月号を眺めながら,この本は読んだなあ,とか,まだ読んでないなあ,今度読もうか…

小山茂仁『私学の民主化 理論と実践』(私学ニュース社)

すみません、一般にはほとんど手に入らない変な本について書きます。 「おすすめ」ではないのですが、けっこう(いろんな意味で)自分として考えることが多かったもので・・・。 本書は1980年の刊行で、1970年代に著者が行った講演や著した論考をまとめたも…

H・G・ウェルズ『タイムマシン』(池央耿訳,光文社古典新訳文庫)

島本理生さん直木賞受賞おめでとうございます! 問題作だなんて言ってごめんなさい。テーマが重すぎるだなんて言ってごめんなさい。皆さんぜひ読もう! 読んで,主人公・真壁由紀の,そして被告人・聖山環菜(かんな)のつらさ,苦しさを共感しよう! 大丈夫…

新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)

『宇喜多の楽土』おもしろかったです。直木賞は残念でしたね。 さて、今週はちょっとAIとシンギュラリティについて思うところがあって、何冊かまとめて読んでみた。 そうした中で、あらためて本書がよくまとまった本だということがわかったので、読み直し…

直木賞大予想!

いよいよ来週7月18日(水),第159回直木三十五賞が発表されます。どの作品が栄冠を勝ち取るか。誰が「直木賞作家」との肩書き(?)を勝ち取るか。今回はその大予想をしたいと思います。・・・なお,ノミネート作品のうち上田早夕里『破滅の王』と本…

森見登美彦『宵山万華鏡』(集英社文庫)

今日は宵山。 年に一度、夢か現か、京の街にワンダーランドが現れる夜・・・。 舞台は京都・洛中。7月16日夜、祇園祭宵山の雑踏に迷い込んでしまった小学生の姉妹の話。蟷螂山、南観音山、鯉山、駒形提灯、偽祇園祭と祇園祭司令部特別警務隊、金魚鉾、宵山様…

瀧羽麻子『ありえないほどうるさいオルゴール店』(幻冬舎)

たまには心安らぐ連作短編集を。ということで,瀧羽麻子『ありえないほどうるさいオルゴール店』。 運河のある北の町でひっそりと営業しているオルゴール店。その店主にはある「能力」があった。“お客様の心に流れる曲”を仕立ててくれるという・・・。 1作…

佐藤優・片山杜秀『平成史』(小学館)

2018年6月18日。揺れた。 震度5を体験したのは、1995年1月17日、2011年3月11日に次いで、3度目だ。 平成という時代がまもなく終わる。平成はいろんなものが揺れた時代だった。 このふたりが語る「平成」という時代は、昭和という知的…