森見登美彦『シャーロック・ホームズの凱旋』(中央公論新社)

 森見氏の手にかかれば、山月記は大文字に駆け上がってツバまき散らすし、メロスは京都市内走り回るし、北白川別当町を自転車で走り、百万遍に鯉を背負った乙女が現れ、夷川ダムには狸の一家が暮らすようになる。

 さて今回は、鴨川べりにビッグベンがそびえるヴィクトリア朝京都で、下鴨本通で開業するDr.ワトソンが馬車に乗って向かうは、寺町通221Bで暮らす盟友シャーロック・ホームズのアパートメント(下宿の主はもちろんハドソン夫人)。このところホームズはとんでもないスランプにあって、上の階に引っ越してきた(同じくスランプのどん底にある)モリアーティ教授と意気投合しているという具合で、京都警視庁(スコットランドヤード)のレストレード警部も心配している。ワトソンが雑誌に書き連ねてきたホームズ譚も休載を余儀なくされ、代わってワトソンの妻・メアリがアイリーン・アドラーの事件簿を連載して大評判となっている。

 そんなホームズが12年前に迷宮入りしたレイチェル・マスグレーブ嬢失踪事件の調査に乗り出す。舞台は洛西の竹林。「ロンドン」というパラレルワールドも登場する。なぜマスグレーブ氏は突然、取り憑かれたように月探査ロケットを開発し始めたのか。そして<東の東の間>の謎とは・・・?

 

 もう、好きにしてください(笑)、としか言い様がない。

 

 特製しおりとブックカバー付き。

(こ)