津村記久子『水車小屋のネネ』(毎日新聞出版)

引き続き本屋大賞ノミネート作品。この際、普段なかなか読まなさそうなタイプのを読んでみた。津村記久子『水車小屋のネネ』。

18歳の理佐は、8歳の妹・律と2人で暮らすことに。水車小屋にはしゃべる鳥のネネがいて――。

姉と妹の、40年にもわたる生活を描いた長編である。決して恵まれているとはいえない2人に、様々な人が手を差し伸べる。そこには計算も見返りもなく、ただただ人のやさしさがあるだけである。

鳥のネネの存在が際立つ。冷静になって考えてみるとと、果たしてこんな鳥がいるのかどうか微妙なのだけれど、そこは物語の妙。ネネはネネとして存在している。

周囲の人たちとの適度な距離感もよい。人の暖かさに触れることのできる良作である。

津村記久子『水車小屋のネネ』(毎日新聞出版


(ひ)