春増翔太『ルポ 歌舞伎町の路上売春 それでも「立ちんぼ」を続ける彼女たち』(ちくま新書)

毎日新聞社会部記者による良質のルポ。新聞記者の本領発揮というところだろう。ただしこういう記事は、おそらく金にはならないだろう、とも思う。私たちは、いつまでこういう記者によるこのような文章を読めるのだろうか。

本書の主役は4人。ユズ・モモ・レイという3人の女性と、支援NPOの男性(坂本さん)である。3人以外にも多くの女性が登場する。彼女たちへのインタビュー、つかず離れずの取材、ホスト、妊娠、入院。そして貯金を切り崩しながら彼女たちに寄り添い続ける坂本さん。よくある大学の先生の解説や大きな話はない。淡々と、彼女たちの姿が描写されつづける。その抑制のきいた取材姿勢と記述が、事態をありのままの姿で読者に放り投げる。どう考えるかは読者に委ねられる。読後、ずしりとくる。

 

トー横キッズ、という言葉を耳にしたのはいつのことだったか(大阪にはグリ下ができた)。こどもたちが光に集まる蛾のように集まって、無防備に夜の街に放り出される。そして歌舞伎町の大久保公園のこともちらほらと耳にするようになった。素人の女性が路上に立つ。報道ではどちらかというと、ホストに狂った女性の自己責任論が目立つように思う。警察の取り締まりやホストクラブ規制は解決にはつながらない。このように日本社会のセーフティネットが抜け始めたというのは、「脱貧困」あたりから警鐘がならされ続けてきたけれど、開いた穴がふさがる兆候はない。

港区女子と歌舞伎町の彼女たち、京都のおじさんには、どちらも同じように見える。一日中真面目に働いても6000円にしかならない現実の前に、彼女たちは1万5千円を手にできる路上に戻っていった(その金額が港区では高いだけだ)。彼女たちを消費する男性がいる限り、この構造は変わらない。そして、東京という街は、日本中から若い女性を収奪し、この国の未来を着実に食いつぶしている。

(こ)