吉川祐介『限界分譲地』(朝日新書)

大先生が平安時代にはまっていらっしゃいますね、私も大河ドラマの方は楽しく拝見させていただいておりますが、あちこちにオマージュが埋め込まれていて、知識があるとなしとでは大違い(なくてさみしい)。

 

今週の新書は「限界分譲地」。「限界ニュータウン」の存在を世に知らしめたブロガー吉川氏による書き下ろしである。戦後の開発ブーム、あるいはバブル期に、居住以外の目的で開発された大都市郊外の分譲地や別荘地の中には、放棄された空き地が虫食い状に広がっているところがある。水道や街灯などのインフラも自治会で運営しているところも少なくないため、その維持がきわめて困難になっているところもある。売却しようにも買い手がつかないらしい、そりゃそうだろう。
ただし、限界分譲地にもいろいろとあるらしく、中には少々の不便はあっても一戸建てが格安の値段で手に入るということで、人気物件もあるのだそうだ。新潟県湯沢町のリゾートマンションの例も紹介されているが、意外に「負動産」は少ないとのこと。

著者は千葉県の限界分譲地で暮らしながら、成田や九十九里方面を中心に取材して発信を続けている。単に限界分譲地をおもしろおかしく取り上げるのではなく、その実態をいろいろな視点から掘り下げており、知らないことだらけでとても興味深く読み進められた。

 

昨日、東証の株価が34年ぶりにバブル期の最高値を更新した。バブルによって傷つき失われたものは、あまりにも大きかったということでもある。

(こ)